2021 Fiscal Year Research-status Report
レジリエンスの生涯発達を促進させる因子の解明と介入プログラムの開発
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21K13689
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野 雄己 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 特任助教 (70793397)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レジリエンス / 生涯発達 / 予測因子 / 介入プログラム / 横断調査 / 縦断調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究開始初年度となる令和3年度はレジリエンスの発達規定要因を明らかにするために,社会人口統計学的要因やライフイベント,心理変数との関連を検討した。分析には横断調査,縦断調査,そして既存の大規模調査のデータを使用した。これらの概要および知見を以下にまとめた。 1.20―70歳の日本人成人3,779名を対象にした横断調査のデータを使用して,レジリエンスと社会人口統計学的要因との関連を検討した。分析の結果,先行研究で報告される横断的年齢変化と同様に(上野・平野・小塩, 2018),社会人口統計学的要因を統制しても,資質的要因に対する曲線的効果,獲得的要因に対する直線的効果が確認された。また各レジリエンス要因に共通して,教育レベルや世帯年収が,資質的要因では就労経験や子どもの人数が正の関連を示していた。 2.第1子が1―5歳の未就学児をもつ30―49歳の日本人の親を対象にした横断調査のデータを使用して,レジリエンスと子育て経験の関連を検討した。分析の結果,社会人口統計学的要因や子育て状況を統制しても,資質的要因と獲得的要因ともに,子どもの知識・スキル,子育てほめられ経験,子どもとの関係との間で正の関連が示され,獲得的要因では対場面的省察も正の関連が確認された。 3.20―79歳の日本人成人603名を対象にした6時点(約1ヶ月間隔)の縦断調査のデータを使用して,レジリエンスの発達軌跡を検討した。条件付潜在成長曲線モデルによる分析の結果,レジリエンス得点は約5ヶ月間では有意な変化は見られず,安定していることが確認された。一方で,傾きの分散は有意であることから,レジリエンスの発達軌跡には個人差があることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り,レジリエンスの発達を予測する様々な要因に関する横断調査が実施され,一定の研究知見が得られている。加えて,令和4年度実施予定である縦断調査も短期間ではあるが,6時点の調査が完了している。この縦断調査より,令和4年度で検討する内容が一部明らかにされ,おおむね順調に研究が進められている。なお,分析結果がまとまり次第,令和3年度で得られた研究成果を学術誌に投稿していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
レジリエンス増強に注目されているマインドフルネスやセルフ・コンパッションとは,本研究の結果からも,高い効果量が確認されている。しかし,縦断調査に基づいた解析は十分に行えておらず,例えば,マインドフルネスやセルフ・コンパッションの向上がレジリエンスの向上に寄与しているのか,明らかにすることはできなかった。令和5年度には介入プログラムの効果検証を行うということで,単にマインドフルネスの概念を導入してプログラムを行うだけで十分なのか,それともそのプログラムの中でマインドフルネスの促進も問われるのか,事前に縦断調査によって検証すべき課題だと思われる。その他,令和3年度の調査で明らかにできなかった変数についても,再検討を行う必要があるため,改めて,データならびに課題を整理する。
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Causes of Carryover |
令和3年度は調査に注力したため,論文執筆まで十分に行えなかった。そのため,次年度に英文校正費ならびに論文掲載費として令和4年度に繰り越しを行い,論文投稿準備を行う次第である。
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Research Products
(6 results)