2022 Fiscal Year Research-status Report
温度可変ラマン分光法によるSiGe混晶の微視的な熱伝導機構解明に関する研究
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21K14201
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
横川 凌 明治大学, 理工学部, 助教 (10880619)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ラマン分光法 / 非調和振動 / 局在振動モード |
Outline of Annual Research Achievements |
シリコンゲルマニウム(SiGe)混晶の微小領域における温度測定を確立すべく、高エネルギー(ラマンシフト)分解能を有する顕微ラマン分光装置を用い、SiGeラマンスペクトルの温度可変測定を実施した。前年度に引き続きラマンシフトと温度の関係を具体的に導出することを目的に、顕微ラマン分光装置に温度可変ステージを搭載し、SiGeのラマンシフトと温度の関係(dω/dT)を明らかにした。室温から300℃の範囲ではdω/dTは線形関係を有することが分かり、温度上昇に伴いラマンスペクトルが低エネルギー(低波数)側にシフトすることを確認した。 今年度は高Ge組成も含む全Ge組成の単結晶バルクSiGeのラマン分光分析を検討し、光学モードであるSi-Si、Si-Ge、Ge-Ge振動モードのラマンシフトと温度の関係の比較検討を実施した。実験に用いた試料はチョクラルスキーおよび飽和溶融帯移動法で作製された単結晶バルクSiGeである。また、前年度の結果を踏まえつつ温度可変ラマン分光分析を行った結果、全振動モードのdω/dTはGe組成に概ね依存せず、各振動モード特有の一定値を有することが明らかになった。 これら光学モードに加え、混晶由来の局在振動モードについてもラマンスペクトルの温度依存性導出を試み、SiGe混晶特有の局在振動モードに関する温度依存性算出も試みた。高Ge組成単結晶バルクSiGeに対し、レーザパワー掃引ラマン分光法と本研究で導出したdω/dTを組み合わせることで孤立原子およびSi-Si、Si-Geペアの局在振動モードがどのような挙動を示すかを詳細に検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度は全Ge組成バルクSiGeのラマン分光分析に着手し、全光学モードのラマンシフトと温度の関係を高精度に見出し、全振動モードのdω/dTはGe組成に概ね依存せず各モード特有の一定値を有することを明らかにした。さらにSiGeの微視的な熱輸送メカニズム解明へ向け局在振動モードの温度依存性評価にも着手しており、高空間分解能下でSiGe熱電発電デバイスの微小領域における温度測定への準備が整いつつある段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
全振動モードのdω/dTを適切に用いつつ、実際のSiGe熱電発電デバイス構造を想定した試料を準備し、高空間分解能下で高精度に温度および熱伝導率を算出可能か検討する予定である。既にSiGeナノワイヤ、自己整合SiGeナノドット等の試料は準備済みであり、レーザパワー掃引ラマン分光分析で微細構造内の温度変化をラマンスペクトルから評価し、デバイスプロセスにフィードバックする。
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Causes of Carryover |
前年度に引き続き、温度可変ラマン分光法の測定条件最適化、新型コロナウイルス感染症の影響で、試料作製を目的とした消耗品費として使用できなかったため次年度使用額が生じた。 次年度使用額の使用計画として、学会・試料作製を目的とした旅費、論文掲載料、SiGe試料を始めとした実験消耗品の購入に充当する予定である。
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