2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of Causal Effects of Tsunami Countermeasures on Urban Structure
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21K14264
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
中居 楓子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80805333)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 津波 / 傾向スコア法 / 固定効果モデル / 地価 / 人口 / 堤防 / 流域 / 旧版地形図 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,(1)防災と都市に関わるパネルデータの構築,(2)津波浸水想定区域の指定が人口と地価に及ぼした影響の分析,(3)木曽川における堤防整備が市街化に及ぼした影響の分析を実施した.本研究課題は,津波に着目した成果を得ることを目的としているが,名古屋大学工学研究科との交流を通じて,河川を対象とした(1)と類似のデータが利用可能であったことから,海岸の分析と並行して,流域に対して同様の分析を実施した.ハザードは異なるものの,パネルデータの構造や適用する解析手法は同じであり,災害リスクが曝露に及ぼす影響を俯瞰的に把握するうえで有益と考えられるため,(3)も本課題に位置付けた. (1)では,曝露としての都市に関わるパネルデータを構築するため,三陸沿岸における明治期以降の国土地理院旧版地形図と国土数値情報を用いて,海岸構造物,土地利用を年代別にGISを用いてトレースした.また,(3)に用いる木曽川のデータは,名古屋大学により同様の手法で作成されているものに加え,新たに,各年代のインフラ構造物を加えてデータを拡充した. (2)では,津波浸水想定区域指定が人口と地価に及ぼした影響を明らかにするため,傾向スコアによるサンプル調整,差分の差分法,固定効果モデル等の手法を試した.日本を対象として,区域指定された前後の年の人口と地価公示価格データを用いて,区域指定の有無との原因―結果の因果関係を推定した結果,区域指定された地域では,地価の下落,人口の減少がみられた. (3)では,木曽川流域の各地点において,上流と下流の連続堤防整備が市街化に及ぼす影響を固定効果モデルで推定した.その結果,下流の連続堤防の整備が市街化を進めることが明らかになった.また,ラグ変数を用いた分析により,堤防整備に先行して市街化が進むという時間的前後関係が確認された.この課題は名古屋大学との共同研究として実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では,津波対策が地域の曝露に与えた影響について,▼原因の違い:構造物によるハード対策,非構造物による制度的対策,▼着目する結果変数の違い:人口,地価,▼地域の違い:都市部,地方部などに応じて結果を体系的に整理することで,「具体的にどのような地域において,津波対策に対する曝露の“弾力性”が高いのか」を把握することを目的としている.また,研究実績の概要に示したように,上記に加え,▼ハザードの違い:津波と洪水についても知見を整理する予定である.非構造物による制度的対策(ソフト対策)と人口,地価の関係については,本課題の前年度に中部地域づくり協会研究助成を得てデータ整備と分析を先行して実施しており,本年度は分析結果の精査と複数の異なる解析手法の比較研究を進めた.これは,現在,既に成果を取りまとめる段階に入っている.また,それらの先行した研究から得られた知見を活かし,木曽川における堤防整備(ハード整備)が市街化に及ぼした影響の分析では,ラグ変数を用いた分析を進め,防災対策の影響が表れるタイムラグについても検討した.この解析は本来2年目以降を予定していたが,試行的にではあるものの1年目に実施することが出来た.なお,津波対策のうち特に構造物による対策の影響については,現在データの整備を途中まで終わらせた段階となっており,分析は2022年度に開始する予定である.以上の状況は,当初の予定よりも約6カ月分程度早めに進んでいるといえるため,「当初の計画以上に進展している」と判定した.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,木曽川における堤防整備(ハード整備)が市街化に及ぼした影響の分析を,三陸沿岸部に適用して実施する予定である.なお,東北においては,山口弥一郎が被災後の「原地居住」や,高所へ一度移転した世帯が海岸に戻る「原地復帰」の現象を指摘しているほか,東日本大震災以降も人々の住まいの分布に関する研究成果が報告されている.本研究では,それらの詳細な成果を踏まえつつ,三陸沿岸部全体のインフラ整備や人々の住まいの推移をマクロに捉えることを試みる.また,2022年度末には,2021年度の成果と併せて,防災対策の違いや,着目する結果変数,ハザード,地域の違いの比較を含めた総括に取り掛かる予定である.
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Causes of Carryover |
購入したパソコンが7万円ほど安く入手できたため,予算が余ってしまった.代わりに,3月の現地調査の旅費に充てることを計画したが,2022年3月16日夜に発生した福島県沖の地震の影響により,旅行がキャンセルとなり,急遽予算が余ってしまった.2022年度に,改めて現地調査を企画しているため,その旅費に充てたいと考えている.
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Research Products
(6 results)