2021 Fiscal Year Research-status Report
Flame Retardancy Mechanisms by Refining Fiber Structure in Cellulosic Materials
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21K14387
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
山崎 拓也 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30882617)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 燃焼 / セルロース / 難燃 / 火災 / 微細化 / 繊維構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに機械的な微細処理によって木質系材料の熱分解特性が変化することが報告されているが,燃えやすい・燃えにくいといった燃焼特性がどのように変化するか包括的に明らかにされていない.本研究では,セルロース材料の繊維構造の微細化がセルロース材料を難燃化するメカニズムを解明することを目的とし,繊維構造と燃焼特性の関係性の検討を行った. 燃焼特性に関わる繊維構造を明確に定義するため,繊維構造の定義を検討した.固体燃焼の理論において,固体粒子の燃焼限界は粒子サイズに依存することが示されており,1500 K以上の空気雰囲気下においても,10 μm以下の炭素粒子は燃焼が困難であることから,粒子径が1 μm 以上を燃焼に影響を及ぼすサイズと予測した.以上より,繊維直径1 - 100 μm の繊維が絡まりあうことで形成される構造を繊維構造と定義した. 繊維構造と燃焼特性の関係性の検討するため,繊維直径が1 - 20 μmの濾紙と和紙,繊維直径50 nm 以下の試料にバクテリアルセルロースを用い,燃焼試験を行った.燃焼試験は燃え拡がり速度と,限界酸素濃度の計測を行った.本研究で用いた面密度0.004 - 0.9 kg/m^2の試料の範囲では,バクテリアルセルロースの限界酸素濃度が濾紙や和紙と比較して,有意に高い傾向が示された.限界酸素濃度の増加は燃焼が困難となることを意味する.繊維直径の異なる試料で限界酸素濃度に差が生じたことから,繊維直径の減少は難燃化に寄与することが示唆された. 熱重量分析により,試料の熱分解特性を調査した結果,窒素雰囲気では熱分解の開始温度が繊維径に依存せず,空気雰囲気下では熱分解の開始温度や炭化物の生成量に違いが観察された.繊維直径の異なる繊維構造の違いがセルロース材料の酸化反応に影響を及ぼすことから,繊維内部の輸送現象が重要である可能性が推測される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セルロース材料の繊維サイズが低下することにより,難燃化する傾向が示唆された.しかしながら,微細化によりセルロース材料の繊維サイズ以外の要因が変化することで,熱分解特性が大きく変化することが確認されたことから,難燃化に寄与する要因を細分化し,繊維構造と燃焼特性の関係性の検討を行った. 機械的な破砕によって変化するセルロース材料の熱分解特性を知るため,熱重量分析を行った.機械的な破砕の時間が増加するごとに,熱分解の開始温度が低下する結果が示された.一方で,機械的な破砕により繊維直径,結晶化度,繊維間の凝集度などが同時に変化することが明らかとなり,燃焼特性や熱分解特性を変化させる繊維構造の要因を一つずつ検証する必要性が示唆された.当初の予定ではナノセルロースファイバーを積層することで試料を作成し,繊維構造の異なる試料での燃焼実験を行う予定であったが,分子レベルでの制御が困難であることから,予定を変更し,繊維構造の異なるセルロース材料を用いて実験を実施することとした. セルロース材料の燃焼に及ぼす影響の大きい構造的要因として,繊維直径,結晶化度,繊維間の凝集度が考えられた.2021年度は,繊維直径が燃焼に及ぼす影響が最も大きいと予測し,繊維直径以外の要因が可能な限り同等かつ,繊維直径の異なる材料を用いてその燃焼特性を検討した.試料には繊維直径が1 - 20 μmの濾紙と和紙,直径50 nm 以下のバクテリアルセルロースを用いた.燃焼試験によって燃焼可能な限界酸素濃度を計測し,各試料の難燃性を評価した.バクテリアルセルロースの限界酸素濃度は濾紙や和紙と比較して,有意に高い傾向が示された.繊維直径50 nm 以下のバクテリアルセルロースの限界酸素濃度は,濾紙と和紙と比較して高いことから,繊維直径の減少は難燃化する要因の一つであることが示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度では,繊維直径の異なる材料を用いて燃焼特性を検討し,繊維直径の減少により難燃性が向上することが示唆された.一方で,結晶化度,及び,繊維間の凝集度と燃焼特性の関係性は未解明である.2022年度は結晶化度のみ異なる試料を用いることや,繊維間の凝集度の異なる試料を作成することで,結晶化度や繊維間の凝集度が燃焼特性に及ぼす影響を評価する. 試料の準備方法では,機械的な破砕の時間や試料の乾燥方法を変化させ,繊維直径,結晶化度,繊維間の凝集度がどのように変化しているかを検討する.あわせて,それぞれの要因の制御が可能なセルロース材料の選定を行う.電子顕微鏡により試料を撮影し,画像解析によって繊維直径と繊維間の凝集度の計測を行い,結晶化度はX線回折法により,結晶と非晶の割合から予測する. 繊維直径,結晶化度,繊維間の凝集度をそれぞれパラメータとするよう試料の作成し,一つのパラメータのみを変化させ,各パラメータの変化によって熱分解特性がどのように変化しているかを熱重量分析によって検討する.熱重量分析の結果より活性化エネルギーを算出し,主要な反応経路が変化しているかを考察する.熱分解時の主要な反応の推定を行うため,熱分解時に発生するガス分析が可能な実験装置を製作する.熱分解によって発生するガスをサンプリングし,ガスクロマトグラフィーを用いてガスの成分分析を行う.発生するガスの成分の時間変化を計測することで,主要な反応の推測を試みる.燃焼特性については,燃え拡がり速度,着火時間,燃焼限界の酸素濃度などを計測し,定量的に評価を行う.燃焼試験に用いる実験装置は,限界酸素指数の評価に用いられる試験装置に準じた装置を用いる.また,低圧下での燃焼試験を行い,反応の時間を低下させることで,詳細な観察も試みる.
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Research Products
(2 results)