2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of pressure-responsive chromatography utilizing specific properties of nano-bubbles
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21K14657
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 圭介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (30805148)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 液体クロマトグラフィー / ナノバブル / 疎水性材料 / 水/疎水性材料界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,カラム充填剤(疎水基を修飾した多孔質シリカ粒子)の細孔内に気体を固定化し,これを分離場として利用するHPLCシステム(表面気泡変調液体クロマトグラフィー:SBMLC)を深化させ,圧力によって分離選択性を自在かつ可逆的に変換可能な分離法とするとともに,質量分析計(MS)との接続を可能にすることでより微量の目的物質の分析を可能とすることを目的としている。また,分子をプローブとして用いる解析方法によって,ナノ気泡の分離媒体としての機能を解明すること目指している。本年度は,市販の充填剤と比較して細孔径の小さいSBMLC用充填剤の開発することで,気体固定相を安定化し,カラムに加える圧力によって溶質の保持を連続的に変化させる圧力グラジエントシステムの実現を目指して研究を行った。 SBMLC専用充填剤を開発する前段階として,アルキル基やフルオロアルキル基で修飾された市販充填剤を用いて,有機化合物の保持における圧力依存性を調査した。その結果,アルキル基を修飾した充填剤では,ベンゼンやハロゲン化アルキル等の極性基を持たない化合物の保持が圧力によって大きく変化すること,フルオロアルキル基を修飾した充填剤では,エステルやケトン等の極性基を持つ化合物の保持が圧力によって大きく変化することを明らかにした。揮発性の高いベンゼンやハロゲン化アルキルの保持が圧力によって大きく変化したアルキル基を修飾した充填剤を用いることで,ナノ気泡の特徴をより詳細に捉えられると考え,SBMLC用充填剤にはアルキル基を修飾することとした。 また,純水系の溶離液を用いるSBMLCのMSへの接続を見据えて,純水系溶離液を用いたLC-ESI-MS/MSによって有機金属錯体を分析する方法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,COVID-19蔓延による通勤制限により研究活動が停滞したため,開発したSBMLC用の充填剤の保持特性の評価、および圧力グラジエント溶離法の検討を完了するに至らなかった。一方,SBMLCの溶質保持における圧力依存性が充填剤の表面化学構造によって変化することを明らかにした。また,水系溶離液または有機溶媒系溶離液を用いた有機金属錯体のLC-ESI-MS/MS測定から,水系溶離液を用いた場合でも,有機溶媒系溶離液を用いた場合よりはやや低感度ではあるが,分析対象物の検出に成功した。これらの成果は,本研究で目指すシステムの構築において大きな収穫である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度開発した充填剤を用いることでSBMLCにおいて圧力グラジエントシステムを実現し,MSとの接続により,微量有機物質の分析法とする。また,確立したシステムにおいて有機分子をプローブとして用い,ナノ気泡の物性解析を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額のうち194139円は発注した試薬が,COVID-19蔓延の影響により年度内に納品されなかったため生じており,既に納品・検収を終えている。残りについては,COVID-19蔓延により,学会・企業との打ち合わせ等に係る出張が行えなかったために,次年度使用額が生じた。そこで,一部研究計画を変更し,開発した充填剤の物性分析項目を増やすとともに外注を行うことで,より詳細にナノ細孔の評価を行うとともに,遅れている研究計画の効率化を目指す。
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