2022 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the acetic acid response mechanism depending on the phospholipid acyl chain structure of acetic acid bacteria
Project/Area Number |
21K14776
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
豊竹 洋佑 立命館大学, 生命科学部, 助教 (60843977)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 酢酸菌 / リン脂質 / モノ不飽和脂肪酸 / リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素 / 酸ストレス耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) Acetobacter属酢酸菌の一種であるA.pasteurianus SKU1108株に、エタノール存在下でモノ不飽和脂肪酸(MUFA)を与えると、SKU1108株はMUFAを細胞膜リン脂質に取り込む。そこで、取り込まれたMUFAが具体的にどのリン脂質分子種のアシル鎖として利用されているのかを調べた。MUFA含有エタノール培地で培養したSKU1108株から全脂質を抽出し、質量分析を用いて各リン脂質におけるアシル鎖組成を分析した。その結果、取り込まれたMUFAはカルジオリピン中に最も濃縮されていることが分かった。次に、本菌の膜結合型アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子を欠損させた酢酸発酵能欠失株を用いて上記と同様の実験を行った。その結果、どのリン脂質画分からも取り込まれたMUFAは検出されなかった。酢酸発酵能欠失株の全脂質成分からは取り込まれたMUFAが検出されていることから、酢酸発酵能欠失株では、取り込まれたMUFAがリン脂質以外の脂質成分に組み込まれていることが示唆された。 (2) SKU1108株は、膜リン脂質アシル鎖組成形成に寄与するリゾホスファチジン酸アシル基転移酵素(LPAAT)のパラログを3つ(ApPlsC1-3)有しており、ApPlsC1からApPlsC3の遺伝子欠損株の構築に取り組んだ。その結果、ApPlsC2とApPlsC3の遺伝子欠損に成功した。ApPlsC1の遺伝子欠損株の構築には至らなかったことから、ApPlsC1は本菌の生育に必須であることが示唆された。得られたApPlsC2とApPlsC3の遺伝子欠損株をそれぞれMUFA含有エタノール培地で培養したところ、どちらも野生株と同様に生育が促進された。このことから、これらの遺伝子は本菌のMUFA取り込みには関与しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
外部添加したMUFAの取り込み機構に関しては、MUFAが特定のリン脂質分子種に濃縮されていることを明らかにすることができた。一方、酢酸発酵条件下でカルジオリピンに濃縮されたMUFAがどのような生理機能をもつのかを明らかにするには至っていない。また、ApPlsC3の遺伝子欠損株の表現型を解析したところ、酢酸に対しては全く感受性を示さなかったのに対し、塩酸による低pHストレスに対しては強い感受性を示すことを見いだした。この発見は、ApPlsC3が酢酸菌の酸ストレス耐性に重要な役割を担うことを示すものであり、計画当初に想定した方向性とは異なるが、学術的に意義のある進展が得られたと言える。しかし、外部添加したMUFAを取り込む機構や、特定のリン脂質アシル鎖として濃縮させる機構の解明には至っていない。このような状況を踏まえると、計画当初に期待していたほどの進展は得られていないことから「やや遅れている。」と評価することが妥当と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 取り込まれたMUFAの生理的意義に迫るための実験を行う。特に、細胞膜物性の変化に着目して研究を進める。また、上述した酢酸発酵能欠失株において、細胞膜のどの脂質画分にMUFAが取り込まれるのかを分析する。 (2) ApPlsC2とApPlsC3がどのような細胞膜脂質成分の合成に関与しているのかを調べる。また、ApPlsC2とApPlsC3の遺伝子欠損株の表現型解析を継続して行い、これらの生理的意義を詳細に明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初、分子プローブの蛍光波長の変化を指標に、外部添加したMUFAを取り込んだ細胞膜の物性を測定する計画であったが、検討の結果、実験系の変更が必要な状況となった。具体的な理由の一つとして、得られる培養菌体の収量が少なく、リポソーム作成に十分な量の脂質を抽出するのが困難であったことが挙げられる。そのため、細菌細胞をスフェロプラスト化し、それに直接分子プローブを作用させる方法に切り替えることとした。また、SKU1108株のリゾホスファチジン酸アシル基転移酵素のパラログ群の機能解析に関して、当初の想定とは異なる進展が得られたため、さらに研究を進める必要があると考えた。これらの変更により研究期間が当初計画よりも長くなり、次年度使用額が生じた。これらは上記実験に用いる実験試薬等の消耗品購入に充てる計画である。
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Research Products
(5 results)