2021 Fiscal Year Research-status Report
三大栄養素の代謝を制御する遺伝子Smek2の機能解析
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21K14806
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 愛健 九州大学, 農学研究院, 助教 (90809435)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 代謝異常 / Smek2 / ゲノム編集 / 実験動物 / 高コレステロール血症 / 三大栄養素代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖代謝異常は、さまざまな疾患のリスクを上昇させるリスク因子として、広く認識されている。申請者らが見出した新規な糖代謝制御遺伝子であるSmek2(Suppressor of mek1, homolog 2)は解糖系の律速酵素である肝臓型ホスホフルクトキナーゼ(PFKL)の発現制御を介して肝臓の糖および脂質の代謝を制御している。しかし、Smek2に欠損変異を持つExHCラットにおいて、糖代謝との直接の関連が指摘されていない高ホモシステイン血症や、脳での不溶性アミロイド蓄積量の増加などが確認されている。また、Smek2の機能解析に関する先行研究の問題点として、Smek2の単一ノックアウト系が確立されていない点があった。本研究はSmek2単一ノックアウトラットの作製を試み、作製したノックアウトラットの代謝を評価することでSmek2の機能の全容を解明することを目指す。また、先行研究において確認されたホモシステイン血症やアルツハイマー型認知症の新規モデル動物としての可能性を追求する。 本年度は、ゲノム編集によるSmek2ノックアウトラットの作製に取り掛かった。欠損変異を誘導するため、Smek2内の配列から設計したガイドRNA(gRNA)を2本設計した。ラットにおけるゲノム編集実験は広く普及していないため、マウスにおける手技を参考としながら、ゲノム編集実験を現在行っている。また、ゲノム編集実験と並行して、in vitroにおけるSmek2過発現実験を行うため、過発現ベクターの作製を行った。先行研究において、大腸菌およびラット細胞の両方でタンパク発現の起こるベクターを用いた場合、過発現ベクターの作製が困難であったことから、今回は大腸菌では過発現の起こらないベクターに変更し、ベクターの作製を行った結果、正常型および変異型の両方の作製に成功した。今後、ラット肝臓細胞を用いた過発現実験に移る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲノム編集によるSmek2ノックアウトラットの作製については現在作成作業を行っている段階である。ゲノム編集に用いるガイドRNAの設計やコロナ禍を原因とした在宅勤務や試薬調達の遅れ、関連する申請(動物実験申請および遺伝子組換え実験申請)の遅れのため、また、受精や妊娠といった実験手技では操れないファクターの影響もあり、実験計画からはやや遅れているが、作製にかかる操作自体は順調に行えているため、ノックアウトラットの作製は近くF0世代のラットが生まれる見通しである。また、並行して行っている細胞実験用のSmek2過発現ベクターの作製については、用いる過発現用ベクターを大腸菌ではタンパクを発現しないものに変更し、ベクター作製の各段階の操作における注意点を洗い出し、実験を再設計したことで、正常型および欠損型の両方の作製に成功した。現在は続くラット肝臓の培養細胞を用いた実験の準備を行っている段階である。こちらは年次計画よりもやや早い進行である。よって、研究全体として”おおむね順調に進展している”と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
Smek2ノックアウトラットの作製については、昨年度に引き続き、ゲノム編集実験を継続する。生まれたF0世代は遺伝子型を確認した後、バックグラウンド系統と交配し、ヘテロノックアウトラット(F1世代)の作製、F1同士の交配によるF2世代の作製と続け、Smek2ノックアウトラットを系統として確立する。作製したSmek2ノックアウトラットについて、コレステロール非負荷・負荷条件で飼育し、代謝を評価することで、生体におけるSmek2ノックアウトの影響を評価する。 並行して、in vitroにおけるSmek2過発現実験を行う。過発現用のベクターは令和3年度で完成している。ラット肝臓細胞株に対して正常型あるいは欠損型のSmek2過発現ベクターをトランスフェクションし、遺伝子発現量およびタンパク発現量の変化を測定することで、Smek2の機能を解明する。測定遺伝子は先行研究でターゲットである可能性が示されている脂質合成系遺伝子、解糖系遺伝子、アミノ酸代謝関連遺伝子を重点的に評価する。
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Causes of Carryover |
細胞実験用の過発現ベクターの作製については、計画を前倒しして開始したが、ノックアウトラットの作製については、実験の開始が遅れた。そのため、作製にかかる道具や試薬の購入を行ったが、ラットや飼育管理にかかる物品の購入は予定よりも少なかった。よって、支出予定よりも実購入が少なかったため、次年度使用額が生じた。次年度使用分はノックアウトラットの作製においてラットおよび消耗品の購入に充てる。
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