2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K15160
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山口 諒 北海道大学, 先端生命科学研究院, 助教 (80812982)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 種分化 / 生物系統地理 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、オオヨモギハムシの北海道野外集団を用いた種間の非対称な交配選好性の進化生態学的起源について、体表の炭化水素が交配時のフェロモンとして使用されている可能性を検討した。ガスクロマトグラフィーによって体表炭化水素の同定を集団ごとにおこなったところ、体表炭化水素は分子量350-550程度の炭化水素から構成されており、各集団あたり10から20の炭化水素を独自の組み合わせとして保有していることが特徴づけられた。雌雄の個体間ではほぼ同一の炭化水素構成を示すのに対し、集団間での構成は大きく異なることから、交配相手選好性の基準として体表の化学シグナルが使用されているという仮説が支持される結果となった。また、これまで得られているシーケンスデータから算出した集団間の遺伝的距離とあわせて解析したところ、遺伝的に非常に近い集団間においても急速なフェロモンの分化と交配前隔離の進化が検出された。前年度までに構築した理論に性淘汰のメカニズムも考慮した結果も踏まえ、過去の親集団における集団サイズの減少や絶滅リスクが、生殖隔離の進化速度を高めていることが考えられる。現在、これらの結果および過去の地史条件をまとめ、論文原稿を執筆している。また、生殖隔離の進化速度を考える際に個体群動態を明示的に考える必要があること、さらにマクロな進化パターンや種の多様性を議論する際にも個体群動態の進化に及ぼすフィードバックが重要であることを総説論文として出版した(Stankowski et al. 2023)。
|