2022 Fiscal Year Research-status Report
コロナウイルス感染におけるセリンプロテアーゼTMPRSS2の構造生物学的基盤研究
Project/Area Number |
21K15241
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
六本木 沙織 岩手医科大学, 医学部, 助教 (20874548)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | TMPRSS2 / セリンプロテアーゼ / コロナウイルス / 構造生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナウイルス感染におけるTMPRSS2(transmembrane protease serine 2)のはたらきを構造生物学的に明らかにすることを本研究の大目的とし、TMPRSS2のX線結晶構造解析に向けたTMPRSS2サンプルの発現について検討した。発現系検討の1つとして、変異型TMPRSS2の立体構造と、コロナウイルス感染症の重症化やコロナウイルスの感染力との関連性を視野に入れ、野生型TMPRSS2と数種類の変異型TMPRSS2の立体構造をAlphaFold2により予測した。TMPRSS2は、触媒三残基セリン・ヒスチジン・アスパラギン酸を含むセリンプロテアーゼドメインなどの3つの細胞外ドメインを持ち、自己開裂(TMPRSS2のセリンプロテアーゼドメインによりTMPRSS2の特定のアミノ酸配列のペプチド結合が切断される)によって活性化することが知られている。TMPRSS2の立体構造予測の結果に基づき、各ドメインの立体構造や位置関係、触媒三残基を含む基質認識に関与するアミノ酸残基、ドメイン間の相互作用、変異アミノ酸残基の位置等を確認した。次年度はこれらの立体構造予測の結果や考察、すでに公表されている活性化TMPRSS2の発現方法などを参考にしたTMPRSS2サンプルの準備と結晶化、大型放射光施設でのX線回折実験を実施し、実験的にTMPRSS2と基質との複合体立体構造やTMPRSS2の基質認識機構を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
病気療養により、計画していた実験を遂行できない状況にあったため。
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Strategy for Future Research Activity |
TMPRSS2は自己開裂(TMPRSS2のセリンプロテアーゼドメインによりTMPRSS2の特定のアミノ酸配列のペプチド結合が切断される)によって活性化することが知られている。活性化TMPRSS2と基質の複合体立体構造や活性化TMPRSS2の基質認識機構を明らかにするため、TMPRSS2発現後に他のプロテアーゼにより切断されるような特定の配列を含む発現方法により活性化TMPRSS2サンプルを準備する。また、変異型TMPRSS2立体構造とコロナウイルス感染症の重症化やコロナウイルスの感染力との関連性を視野に入れた変異型TMPRSS2-基質複合体のX線結晶構造解析を進めるため、野生型TMPRSS2と変異型TMPRSS2の立体構造予測の結果を参考に変異型TMPRSS2の発現を実施する。TMPRSS2サンプルは、基質としてSARS-CoV-2スパイクタンパク質膜融合領域におけるTMPRSS2作用部位付近4-8残基のペプチドを用いて結晶化する。
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Causes of Carryover |
課題採択後に他機関によりTMPRSS2の立体構造決定がなされ(PDB ID: 7MEQ)、当初の研究計画を見直すこととなった。TMPRSS2は自己開裂(TMPRSS2のセリンプロテアーゼドメインによりTMPRSS2の特定のアミノ酸配列のペプチド結合が切断される)によって活性化することが知られている。次年度は、他機関が使用した発現方法(TMPRSS2発現後に他のプロテアーゼにより切断されるような特定の配列を含む発現方法)、初年度に実施した構造予測の結果等を参考にし、変異型を含むTMPRSS2の遺伝子合成、発現と精製を行い、活性化TMPRSS2サンプルを準備する。基質はSARS-CoV-2スパイクタンパク質膜融合領域におけるTMPRSS2作用部位付近4-8残基のペプチドを用い、結晶化と構造解析を実施する。
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