2022 Fiscal Year Annual Research Report
ニキビ患者と健康成人における高病原性アクネ菌の定着機構の解析
Project/Area Number |
21K15303
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
中瀬 恵亮 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (40641741)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ニキビ / アクネ菌 / 遺伝子型 / 皮脂 / 脂肪酸 / バイオフィルム |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度(2021年度)は「健康成人におけるアクネ菌の変化」について研究を行った。本学学生ボランティアを集い、皮膚表面から皮膚細菌を採取し、アクネ菌を含む種々の皮膚細菌の分離および同定を行った。薬剤耐性を評価した結果、マクロライド系薬およびクリンダマイシンに対する耐性株は10%未満であり、同時期に分離されたニキビ患者由来株と比較して有意に少なかった。また、2014年に分離された健康成人由来株と比較して、わずかに増加したが、有意な違いは認められなかった。遺伝子型の解析を行った結果、これまでも健康成人で半数以上を占めたA型株が最も多く認められた。一方で、F型株は2014年に比べ4倍の約25%に有意に増加した。したがって、F型株はニキビにおける病原性の関連だけでなく、健常者皮膚に高い定着性を示す可能性が示された。 そこで、今年度(2022年度)は計画通り、F型株の増加要因の解析を行った。種々の遺伝子型のアクネ菌株に対する皮脂構成物および表皮細胞が産生する抗菌ペプチドへの感受性を評価した。その結果、抗菌ペプチドに対する感受性に違いは認められなかった。一方、皮脂構成物のうち、どの菌株もスクアレンやワックスエステルには感受性を示さなかったが、パルミトレイン酸やリノレン酸等の脂肪酸には高い感受性を示した。さらに、わずかではあるが菌株ごとに異なる感受性を示した。さらに、人工皮脂存在下におけるF型株のバイオフィルム形成能を評価した結果、人工皮脂の濃度依存的にバイオフィルム形成量が増加した。したがって、アクネ菌は遺伝子型により皮脂構成物に対する感受性が異なることが示され、生存のためにバイオフィルム形成を行っている可能性が示唆された。
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