2021 Fiscal Year Research-status Report
赤内型マラリア原虫における過酸化脂質代謝経路の解明
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21K15429
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
福本 隼平 長崎大学, 熱帯医学研究所, 特別研究員 (30882401)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マラリア / マラリア原虫 / 赤内期 / 酸化脂質 / フェロトーシス / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
三大感染症の一つであるマラリアは赤血球に感染したヒトマラリア原虫(赤内型マラリア原虫)によって惹起される。赤内型マラリア原虫は、血流中の酸素や栄養素として取り込んだヘモグロビン由来の活性酸素による高度な酸化ストレスに晒されながら増殖を行わなければならない。活性酸素によって生成される過酸化脂質は、細胞膜における粘弾性の低下やDNAの損傷、フェロトーシスと呼ばれる鉄依存的な細胞死を誘導することが明らかになっている。このことから、マラリア原虫が赤血球内で増殖を行うためには、自身にとって有害である過酸化脂質を除去するための代謝経路が必要不可欠だと考えられる。しかしながら、マラリア原虫における過酸化脂質の代謝経路に関する知見は、哺乳類細胞のものと比較して圧倒的に不足しているのが現状である。よって本研究では、赤内型マラリア原虫が有する過酸化脂質代謝経路の解析を行うことで、高度酸化ストレス下でのマラリア原虫の生存戦略を明らかにする。また、過酸化脂質代謝経路を阻害することで、原虫にフェロトーシス様の細胞死を誘導できるかどうか検証を行う。申請者はBLASTによる相同性検索によって、哺乳類細胞の過酸化脂質代謝経路で働くタンパクの原虫ホモログを同定した。これらの遺伝子をノックアウト(KO)、もしくはコンディショナルノックダウン(cKD)した遺伝子改変原虫を作成する。作成した遺伝子改変原虫を使用して、これらの株における過酸化脂質量を蛍光試薬または質量分析計により検出する。これにより、当該遺伝子が過酸化脂質経路で機能することを確かめる。最後に、過酸化脂質の蓄積がマラリア原虫にどのような影響を及ぼすか確かめるため、遺伝子改変原虫における表現型解析をフェロトーシスマーカーに注目して行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マラリア原虫における酸化脂質代謝経路で働くと推定される3つの遺伝子に注目し、これら遺伝子のノックアウト(KO)株またはコンディショナルノックダウン(cKD)株を作成した。しかしながら、cKD株において親株との明確な表現型の違いが認められなかったため、DiCreシステムを使用したコンディショナルノックアウト(cKO)株の作成を行う予定である。DiCreシステムを使用した遺伝子改変原虫の作成は当初の実験計画には組み込まれていなかったため、研究の進行に若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
マラリア原虫における酸化脂質代謝経路で働くと推定される3つの遺伝子に注目し、これら遺伝子のノックアウト(KO)株またはコンディショナルノックダウン(cKD)株を作成した。本年度は引き続きこれらの株を使用した基本的な表現型解析を行う。具体的には、PCRまたはウエスタンブロットによるKOまたはcKDの確認、該原虫の増殖速度の定量、当該タンパクの局在解析などである。また、DiCreシステムを使用したコンディショナルノックアウト(cKO)株の作成も同時に行う。次に、これらの株における過酸化脂質量を蛍光試薬または質量分析計により検出する。これにより、当該タンパクが過酸化脂質経路で機能することを明らかにする。最後に、遺伝子改変原虫を使用してフェロトーシスマーカーである細胞質活性酸素および膜過酸化脂質の測定を行う。蛍光試薬であるH2DCFDA、 およびC11-BODIPYを用いて細胞質活性酸素および膜過酸化脂質を検出し、フローサイトメーターにより蛍光強度の定量を行う。
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