2022 Fiscal Year Research-status Report
マクロライド耐性化による百日咳菌の増殖性および病原性の変化
Project/Area Number |
21K15441
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
小出 健太郎 国立感染症研究所, 細菌第二部, 研究員 (30874276)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 百日咳 / 薬剤耐性 / 全ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、大阪で分離されたマクロライド耐性百日咳菌株の細胞障害性を、マクロライドに対して感受性を示す百日咳菌流行株と比較することで評価した。百日咳菌を含むBordetella属菌はタイプIII分泌装置とよばれる病原因子分泌装置を有しており、この装置を介して分泌される蛋白質が病原性に深く関与していることが示唆されている。Bordetella属菌を培養細胞に感染させると、タイプIII分泌装置の働きによって細胞膜を損傷することが過去の研究で報告されている。本研究では、マクロライド耐性百日咳菌株および流行株をラット肺上皮由来のL2細胞にそれぞれ感染させ、細胞から培地中に放出された乳酸脱水素酵素(LDH)活性を測定することにより細胞傷害性を評価した。その結果、マクロライド耐性百日咳菌株と流行株の細胞障害性に統計学的な差は見られなかった。今回の実験では、複数のマクロライド感受性流行株を使用したが、株間で細胞障害性は大きく異なることが明らかになり、マクロライド耐性化に伴う百日咳菌の細胞障害性の変化は確認できなかった。 上記の実験に加えて、日本で2株目となるマクロライド耐性百日咳菌株の全ゲノム解析を実施した。ショートリードおよびロングリードを使用したハイブリッドアセンブルによって高精度な完全長配列を決定し、国際的なデータバンクに登録した。今回得られたゲノム配列を日本で最初に確認されたマクロライド耐性百日咳菌のゲノム配列と比較したところ、複数の遺伝子上に一塩基変異が確認され、またゲノム構造も異なることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、マクロライド耐性百日咳菌株と国内流行株の表現型の差異を明らかにすることを目的としており、上述の通り実験は概ね計画通りに進んでいる。全ゲノム解析による完全長配列の決定など、計画していた以上の成果も得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
国内2例目となるマクロライド耐性百日咳菌株に対しても上述の試験を行うことで、マクロライド耐性化による表現型の変化をより詳細に分析する。
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Causes of Carryover |
調達方法の工夫などによって経費の節約を行い、論文投稿の費用として使用する予定だったが、年度内に論文投稿に至らなかった。次年度では論文投稿を行い、その費用とする。
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