2023 Fiscal Year Annual Research Report
マクロライド耐性化による百日咳菌の増殖性および病原性の変化
Project/Area Number |
21K15441
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
小出 健太郎 国立感染症研究所, 細菌第二部, 主任研究官 (30874276)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 百日咳 / 薬剤耐性 / 全ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、新たに東京で見つかったマクロライド耐性百日咳菌株であるBP625に対して、薬剤感受性試験および増殖試験を実施し、大阪で分離された耐性株であるBP616や国内流行株との比較を行った。BP625の液体培地中での増殖速度は、BP616や流行株と顕著な差は見られなかった。また、薬剤感受性試験ではBP616と同様に全てのマクロライド系抗菌薬に対して高い最小発育阻止濃度が確認された。加えて、マクロライド耐性BP616およびBP625の全ゲノム解析を行い、日本および中国の百日咳菌株のゲノムデータと合わせて系統解析を行った。その結果、BP616およびBP625は中国株と遺伝的に近縁であることが明らかになった。また、BP616とBP625を比較すると、ゲノム上に11個の一塩基変異があり、さらにゲノム構造も異なっていた。これらの結果から、日本国内で耐性を獲得した百日咳菌株が広がっているのではなく、これら2株は中国から日本へそれぞれ別ルートで侵入した可能性が高いことが示唆された。全ゲノム解析によって得られた結果を論文として発表した。
本研究では、日本国内で分離されたマクロライド耐性百日咳菌株の増殖性の評価および全ゲノム解析を行った。マクロライド耐性菌株と国内で採取された流行株の増殖速度を比較したところ、顕著な差異は認められなかった。また、マクロライド耐性菌株をマクロライドの選択圧がない環境で長期間にわたり継代培養したが、耐性変異であるA2047G変異は維持され、マクロライドに対する高度耐性も持続した。これらの結果は、百日咳菌のマクロライド耐性獲得に伴うfitness costが非常に小さいことを示唆している。さらに、先述したゲノム解析の結果を考慮すると、日本国内におけるマクロライド耐性百日咳菌の再出現が今後も高い可能性であることが示唆される。
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