2022 Fiscal Year Research-status Report
初代培養を用いた同腹仔のハンチントン病モデルと野生型間の神経脆弱性の定量比較
Project/Area Number |
21K15636
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
清水 英雄 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 神経薬理研究部, 科研費研究員 (70812212)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ハンチントン病 / トリプレットリピート病 / 脆弱X症候群 / プロテアソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、遺伝病であるハンチントン病での神経細胞内における異常を明らかにすることを目的としている。ハンチントン病は遺伝性トリプレットリピート病の一つであり、異常伸長したCAGリピートを持つHTT遺伝子が原因とされている。同様のトリプレットリピート病の一つである脆弱X症候群はFMR1遺伝子上でCGGリピートが異常伸長し、FMR1のコードするタンパク質であるFMRPの発現が抑制されることで引き起こされる。FMRPはRNA結合タンパク質であり、DLG4のmRNAと結合する。また、FMRPとよく似たタンパク質にFXR1というタンパク質があり、合わせてFXR Familyに含まれる。神経芽細胞腫であるNeuro2a細胞株を使用して、FMR1遺伝子と、それに関連するFXR1遺伝子とDLG4遺伝子をそれぞれノックダウンして、細胞内でどのような異常が生じるか調べた。その結果、これらの脆弱X症候群関連遺伝子のノックダウンによって、細胞内でユビキチン-プロテアソーム系の分解経路が異常亢進するということを発見した。Neuro2a細胞株は無血清培地で分化し、突起を伸展するが、これらの遺伝子をノックダウンすると突起伸展が阻害された。この突起伸展の阻害は、初代培養神経細胞を用いた実験でも同様に観察された。同様のリピート病であるHTT遺伝子をsiRNAによってノックダウンしたところ、脆弱X症候群関連遺伝子と同様に細胞の突起伸展が阻害された。これによって、HTT遺伝子の異常によって、FMRP関連因子の異常と同様に、タンパク質の分解系に異常が生じていることが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、卵巣移植した親マウスから生まれた仔マウスを用いて初代培養神経細胞を作製するのだが、仔マウスが生まれてからの経過時間に応じて、培養21日目での培養細胞の性質に差が出てしまうことがわかった。生後0日から作製した初代培養細胞と生後2日から作製した初代培養細胞では、培養21日目で生後2日由来の細胞の生存率が明らかに低かった。そのため、培養のロット間の差が大きく、安定した結果を出すのが難しい。上記の理由で、研究計画より遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
安定したクオリティの培養細胞を作製するためには、生後の経過時間をある程度揃える必要がある。そのため、卵巣移植したマウスを増やして、繁殖個体を多くすることで、培養の機会を増やして、遅れに対応していく。また、細胞株を合わせて使うことで、初代培養細胞以外でもデータを蓄積していく。 HTT遺伝子のノックダウンにより、神経芽細胞において、細胞の突起伸展が阻害されていた。しかしながら、HTT遺伝子がコードするタンパク質、ハンチンチンの働きは未だほとんど明らかではない。細胞実験において同様のフェノタイプを示したトリプレット病に関する遺伝子のノックダウンでは、ユビキチン-プロテアソーム系のタンパク質分解系に異常が生じていたことを明らかにした。そこで、siRNAを用いてHTT遺伝子のノックダウンを行い、神経系の細胞でタンパク質分解系に生じる異常を調べる。加えて、異常型HTTを発現するベクターを細胞にトランスフェクションして、異常型HTTが神経細胞にもたらす影響について調べる。また、ハンチントン病モデルマウス由来の初代培養神経細胞と野生型マウス由来の初代培養神経細胞の間で、タンパク質分解系に異常が生じているかどうかを調べる。
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Research Products
(4 results)