2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K15681
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 康義 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50727451)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | パーキンソン病 / 再生誘導療法 / 神経変性疾患 / 疾患修飾療法 / 間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究に必要なHMGB1ペプチドを共同研究にて準備した。次にG51Dαシヌクレインを精製し、aggitation法とソニケーションにより前繊維(PFFs)を作成した。透過電子顕微鏡でサイズが適正であることを確認し、初代神経培養でリン酸化αシヌクレインが誘導されることを確認した上で、野生型マウスの黒質に定位的に投与してパーキンソン病モデルを作出した。作出したモデルに対して、HMGB1ペプチドの早期・後期・継続投与と対照実験を行い、3、6カ月後に行動解析、7カ月後に病理解析を行った。本モデルはPFFのバッチ間差などにより神経障害度に変動があるモデルであり、今回作出したモデルでは黒質のTH陽性神経細胞死が予測よりも軽度であり有意な差は神経保護効果は見られなかったが、HMGB1ペプチドが神経細胞死を軽減する傾向および対側脳への病理進展を有意に抑制する効果が確認された。 上記結果に基づき、PFFパーキンソン病モデルは時間のかかる実験系であること、また大阪大学動物舎移転により生体マウスの移動ができないことから、POCを確立するために、より短期間で解析可能な6-OHDA投与パーキンソン病マウスモデルでの解析を行った。6-OHDAまたは生理食塩水を黒質に定位投与したあと、HMGB1ペプチドまたは生理食塩水を4日連続投与静脈投与し解析を実施したところ、HMGB1ペプチドが行動試験を改善することを見出した。次に障害度が中等度となる、線条体6-OHDA投与モデルを作出し、HMGB1ペプチドまたは生理食塩水を静脈投与して2ヵ月追跡して解析する実験を実施している。 初年度は以上の結果により、パーキンソン病モデルに対してHMGB1ペプチドによる再生誘導療法が有効性である可能性を示唆するデータを得た。引き続き、コアとなるデータ取得による非臨床POC取得と機序解明を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、初年度にG51D-PFF黒質投与パーキンソン病マウスモデルでの解析行った。解析結果からは有効性、病理進展抑制を示唆する結果を得ている。POC確立のためのデータとしては不十分であったこと、予測はしていたが動物舎移転時期の変動等の外的要因を考慮し、上記モデルで取得したサンプルを用いた機序解析(神経炎症評価など)と並行して、6-OHDAパーキンソン病モデルでの薬効評価実験を追加した。黒質6-OHDAモデルで行動異常軽減を確認しており、現在線条体投与モデルで神経保護効果、行動異常改善効果を検証している。毎月共同研究先と定例会議を実施し進捗管理をしつつ、解析実験の準備も進めており、プロジェクトはおおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
6-OHDA線条体投与パーキンソン病モデルを用いた解析を実施する。この実験は複数回反復し再現性確認を行う予定である。1セットにつき2ヵ月の観察期間中反復して行動実験を行い、その後に、病理・生化学解析を実施する予定である。 また、間葉系幹細胞を追跡できるレポーターマウスを共同研究先にて準備中であり、POC取得次第レポーターマウスを用いたパーキンソン病モデル作出・薬剤投与実験を行うことで機序解明も進める。 G51D-PFFを用いたモデルでの再実験については、投与は熟練者が実施しているがタンパク凝集体のバッチ間誤差も影響するため、上記の結果を元にシーズの非臨床試験としての充足性を考慮した上で要否を判断したい。進捗管理については、引き続き毎月定例ミーティングを実施して、密に連携を取ったうえで研究を推進していく。また特許・用途特許が関係する開発課題のため、学会発表を含めた結果の公表については、一定期間差し控える。
|
Causes of Carryover |
今年度の実験については、HMGB1ペプチド合成や投与実験は共同研究先の費用負担にて実施できたこと、タンパク合成試薬・合成に要品、病理・生化学解析に必要な各種抗体や試薬は当ラボの残存試薬を有効活用したこと、などから次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、in vivo実験、抗体や各種生化学試薬の購入などに用いる。
|