2022 Fiscal Year Research-status Report
現代パキスタンにおけるイスラーム宗教政党の台頭と宗教学校の隆盛に関する研究
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21K17938
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 和憲 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特任研究員 (50884699)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | パキスタン / バレールヴィー派 / デーオバンド派 / ターリバーン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、パキスタンにおけるウラマー(イスラーム学者たち)を養成するマドラサ(宗教学校)と彼らが主導する宗教政党に焦点を当て、西洋近代教育を受けた政治家や官僚が大半を占める政府に対して、マドラサや宗教政党を運営するウラマーがどのように関与または干渉してきたのかを明らかにする。スンナ派の派閥の宗教政党の政党綱領やマドラサの資料から政権の政策に対する反応を検討することで、宗教政党やマドラサからパキスタンの歴史を再構成し、パキスタンにとってイスラームとは何かという大きな問いに対する答えを提示することを目指している。 2022年度は2010年代以降パキスタンで勢力を拡大しているバレールヴィー派の宗教政党であるラッバイク運動に関する研究を中心に行った。バレールヴィー派の宗教政党は、1947年の独立当初からデーオバンド派宗教政党であるイスラーム・ウラマー協会(JUI)に次ぐ組織として、パキスタン・ウラマー協会(JUP)がある。しかし、JUPは1980年代に内部抗争が勃発し、バレールヴィー派宗教政党の影響力は低下していた。このような状況下で、2010年代に起きた冒涜法を巡る事件により、バレールヴィー派の新興宗教政党であるラッバイク運動に対する支持が拡大した。5月には日本中東学会年次大会、7月には英語発表、8月にはイスラーム地域研究若手研究者の会8月例会において、オンラインにて、ラッバイク運動に関する口頭発表を行なった。 またパキスタンのデーオバンド派と深い関係を有しているアフガニスタンのターリバーンについて、その創始者であるムッラー・ウマルに関する伝記の翻訳および解説を『宗教問題』誌に寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスによる感染症拡大時期であったが、引き続き現地滞在しており、文献調査については順調に進んでいる。対面のインタヴューについては自粛を余儀なくされたため進んでいないが、オンラインによる研究発表の機会を幸いに得ることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は2022年度に口頭発表を行なったラッバイク運動に関して論文を執筆する。加えて、昨今パキスタン国内で活動を活発化させているパキスタン・ターリバーン運動(TTP)に関する口頭発表を行う予定である。 また引き続きパキスタン国内で文献収集および聞き取り調査を継続し、最終年度に向けて英語やウルドゥー語による研究成果の公開に努める。
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Causes of Carryover |
2023年3月のラホール滞在が想定よりも短期間で済んだため次年度使用額が生じた。これについては引き続きパキスタン国内旅費として使用する。
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