2021 Fiscal Year Research-status Report
Transformation and Coexistence of the Relationship between Leopards and People in "Rural Area", Kenya
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21K17959
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山根 裕美 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 特任助教 (80830140)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アフリカヒョウ / ケニア / 野生動物保全 / 牧畜民 / マサイ / ライオン狩り / 人と野生動物の関わり |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、引き続きコロナ禍の影響で、調査地であるケニアへの渡航が危ぶまれていたこともあり、リモートで現地の調査助手による自動撮影カメラの設置と、インタビューを実施することが可能となった。2021年10月には本人の渡航も可能となったが、ケニア国内での移動が制限される場面もあり、リモートによる調査を継続しながら、調査を続けることができた。調査地には7台の自動撮影カメラを設置している。現地調査助手によるカメラの設置、データの転送、調査地の様子をビデオカメラで記録してもらった。 また、マサイの人々が「伝統的」に続けられてきたライオン狩りについてインタビューを実施し、その行為が与える人と野生動物の関係や、保全への役割についての資料を収集している。インタビューは、高齢者からは、彼らの幼少期の様子とと現在の生活について重層的な聞き取りを実施し、若年層からは現在の野生動物との関わりや生活様式について、主に半構造的インタビュー手法を用いて調査を実施してきた。興味深かったのは、実際にライオン狩りを実施していた男性を待つ家族の話で合った。特に「妻」や、結婚適齢期であった女性の、ライオン狩りに対する考察や、「戦士(モラン)」を待つ様子については、貴重な話を聞くことができた。マサイのライオン狩りについては、保全的観点から反対を唱える意見が多い中で、ライオン狩りがケニアの野生動物と人の関係および、保全に与えるメリットについては、議論されてこなかった。 本研究では、ライオン狩りを批判的に考えるのではなく、ケニアにおける食肉目の現在の生息分布が広範囲でマサイの居住地に重なること、さらには、牧畜民の生活する地域と重複することに着目して、人と野生動物の関わりについてさらに議論を深めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度前半は、フィールドに入ることが出来ず、現地にいる調査助手にデータの収集をお願いし、調査を進めてきた。現地の人がインタビューすることで、今まで自身が収集していたデータとは良い意味で異なるデータを収集することができた。後半より、ケニアに渡航し、フィールドにも徐々に通えるような状況になってきている。引き続きリモートによる調査を活用しつつ、状況にあわせて調査を進めていく予定である。(1)自動撮影カメラの設置については、台数が若干予定数より少ないものの、着実にデータを蓄積しており成果が出ていると考えている。(2)ヒョウへのGPS装着については長期にわたることもあり、2021年度は実施することができなかった。2022年度は、GPS装着に向けて調査を進めていくことが出来ればと考えている。(3)住民へのインタビューについては、主にリモートで調査助手を通じて実施してきた。興味深い事例が数多く見受けられた。2022年度は、インタビューを裏付けるようなデータを本人が自らが収集し、比較考察が可能となればと考えている。 未だ、COVID-19の影響で、観光立国であるケニアに、なかなか観光客が戻ってこないこと、追い打ちをかけるように、降雨量が少ないことから、牧畜民にとっては厳しい時期が続いた。自分たちの生活を立て直すことが第一であり、野生動物保全に関わる事項については優先順位が下がってしまう。野生動物による家畜被害に比べ、干ばつによる牧草の不足や、それに伴う病気の発生により、牧畜民は多くの家畜を失うこととなった。このような「特異」な状況についても、考察を深められればと考えている。 ケニア国内における野生動物調査に関わる許可証の取得に関わるプロセスが変更になったこともあり、取得が難しくなり時間がかかるようになったことも、調査を難しくしている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、自動撮影カメラの設置場所を増やし、調査地に入る頻度を増やしたいと考えている。また、2021年度には実施できなかった、ヒョウの捕獲およびGPSの装着が実施できればと考えている。ライオン狩りに関わる聞き取り調査では、現在集まっている記録を精査するとともに、裏付けとなる二次調査を進めていければと考えている。 自動撮影カメラについては、2021年度までに集まった画像データの分析を順次開始したいと考えている。撮影された写真から、野生動物の種の同定を実施し、インベントリーデータとして、データベース化する。ヒョウについては、その模様から個体識別し、地域におけるヒョウの生息数推定を行う十分なデータ整理を行う。また、地域住民によって撮りためられた動画や静止画から、地域の様子や野生動物の生息状況などのデータ整理を実施することで、調査地域における保全戦略を構築できればと考えている。そのためにも、データの収集および、地域住民との協力体制のさらなる強化に努めていく。 ライオン狩りについては継続してインタビューを実施し、インタビュー結果のカテゴライズ、統計分析に十分な事例を確保できればと考えている。またライオン狩りはマサイの人々の伝統的な儀式といえるものであるが、地域による地域差があるように推測できる。この地域差に注目し、隣国タンザニアのマサイの人々によるライオン狩りに関わる先行研究なども参考にして、調査を進めていく予定である。 GPSの装着については、まずヒョウを捕獲する必要があり、捕獲のための箱罠の確保やチームの編成が必要であるため、徐々に準備を進めていく。特にチーム編成については、熟練レンジャーが引退したこともあり、再編成の必要がある。
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Research Products
(1 results)