2021 Fiscal Year Research-status Report
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の炎症制御機構の解明と新規治療戦略への展開
Project/Area Number |
21K18255
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
烏山 一 東京医科歯科大学, 高等研究院, 特別栄誉教授 (60195013)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 急性呼吸窮迫症候群 / 肺炎症 / 炎症制御 / 好塩基球 / 1細胞トランスクリプトーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、新型コロナウイルス肺炎などの重症肺炎、敗血症、外傷や誤嚥などが誘因となって発症する重篤な急性肺炎症である。呼吸不全に対する処置として人工呼吸管理が行われるが生存率の改善に寄与できる確立した薬物療法は存在しない。新型コロナウイルス感染が多発している地域では高齢者や基礎疾患を持つ患者がARDSを引き起こして重症化することが大きな問題となっており、肺の炎症を抑制して肺機能を改善する新たな治療法の開発が切望されている。私たちは、ARDSのマウスモデルにおいて好塩基球を除去した場合に肺炎症が増悪して血中酸素飽和度が低下、生存率が減少することを見いだした。このことは、好塩基球がARDSの炎症抑制に重要な役割を果たしていること強く示唆している。フローサイトメトリーによる解析から、好塩基球は肺浸潤細胞の0.1%ほどを占めるに過ぎない極少細胞集団であることが明らかとなった。従来の手法でこのような小集団の遺伝子発現の解析を進めることは不可能なので、高感度の1細胞トランスクリプトーム解析を試みた。その結果、好塩基球を含む多様な細胞種のそれぞれについて網羅的遺伝子発現解析が可能となり、肺に浸潤している好塩基球が炎症制御関連分子を高発現しており、さらにインターラクトーム解析から好塩基球の産生する機能分子の標的となりうる細胞が明らかとなってきた。種々の遺伝子改変マウスを駆使して、それぞれの分子・細胞候補について検証を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ARDSのマウスモデルにおいて好塩基球は肺浸潤細胞の0.1%ほどを占めるに過ぎない極少細胞集団であることが明らかとなったが、最新の高感度1細胞トランスクリプトーム解析をおこなうことで好塩基球を含む多様な細胞種のそれぞれについて網羅的遺伝子発現解析が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
1細胞トランスクリプトーム解析の結果を踏まえ、好塩基球由来メディエーター → 標的細胞 → エフェクター分子産生 → 炎症抑制という多段階な炎症制御経路を想定して、この経路に関わる細胞ならびに分子の同定を進める計画である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染蔓延の環境下で、当初予定していた実験がごく一部であるが執行できなかった。その分に関しては翌年度に執行予定である。
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