2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K18318
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
早坂 大亮 近畿大学, 農学部, 准教授 (20583420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角谷 拓 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 室長 (40451843)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 生態リスク評価 / 化学物質曝露 / 温暖化 / 生物群集 / 生物間相互作用 / 生態系レジリエンス / メソコズム / キーストーン指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、農薬の曝露拠点であり、かつ生物・生態系サービスのホットスポットである水田をモデルに、複合影響要因や地理的影響を操作・比較可能な野外・開放系実験を主軸として、①汎用的な生態系把握のためのコア機能群(共通の特性をもつ生物種や個体群の集合)や相互作用の特定と、②実用的な生態系機能の指標(生態系レジリエンス指標)の検討に取り組み、もって化学物質による群集・生態系への実効性のある影響評価手法を検討するものである。 令和3年度は全国的なコロナ禍の猛威により、現地調査や出張自体がままならず、思うような進捗は達成できなかったが、各サブテーマで以下のような成果が得られた。 サブテーマ①の成果:加温と農薬曝露に対する生物群集の組成についてモニタリングした結果、農薬曝露単独処理区の群集組成は時間経過とともに無処理区と近似する傾向にある一方、複合処理の群集組成は常に無処理区と異なる傾向にあった。一方で、加温単独処理の組成は、時間経過とともに無処理と乖離した。つまり、複合処理では、農薬の影響と加温の影響が入れ替わるように群集に作用したことで、生態影響が長期化した可能性が示唆された。また、各生物群の密度に着目すると、農薬処理による捕食性昆虫の密度低下にともない餌生物種の密度が増加するといった、生物間相互作用を介した間接効果を示唆する結果も得られた。 サブテーマ②の成果:野外操作実験区における生物の個体数モニタリングデータにもとづいて、多数の生物間で構成される相互作用ネットワークの定量化を試みた。その上で、ネットワークの中心性や連結性などのトポロジー構造や、相互作用強度や強度の時間変動などの定量的な性質など、実験処理として与える人為かく乱に対する生物群集の応答に影響を及ぼすことが想定される生物間相互作用ネットワークの特性値を算出・定量化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度はコロナ禍の猛威にともなう所属機関による厳しい研究制限措置により、現地調査や出張自体がままならず、当初計画を達成できたとは言い難く、進捗はやや遅れている。 サブテーマ①については、最低限のモニタリングデータは取得でき、処理(加温、農薬曝露)間の生態影響の共通性・相違性の抽出を進めている。また、次年度の調査に向けた課題や問題点の洗い出しを行っている。 サブテーマ②については、キーストーン指標や生態系レジリエンスモデルの探索に向けたデータ収集・解析を計画通り進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本格的に野外操作実験(メソコズム試験)を進め、生物多様性におよぼす農薬曝露と加温(温暖化)の単独ならびに複合影響のプロセスの解明を目指す。また、生物間相互作用の定量化と生態系影響の分析を行い、汎用性と指標感度のバランスの取れた指標(コア機能群)ならびに生態系レジリエンス指標の探索を進める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による研究活動の制限ならびに各種調査機器や半導体等の不足にともなう材料納入の遅延、また研究協力者(博士研究員)の採用が遅延したため。ただし、令和4年4月1日より博士研究員を採用したこと、また各種研究用部材の供給が正常化しつつあることから、順次予算の執行を進めていく。
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Research Products
(5 results)