2021 Fiscal Year Research-status Report
近現代アートの保存・継承に向けた収蔵品情報管理・共有システムの構築
Project/Area Number |
21K18340
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
田中 眞奈子 昭和女子大学, 生活機構研究科, 准教授 (70616375)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 絢子 独立行政法人国立美術館国立国際美術館, その他部局等, 研究員(移行) (10786916)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 近現代アート / 収蔵品情報管理・共有システム / 保存 |
Outline of Annual Research Achievements |
近現代アートは、素材の脆弱性や複複性、表現形態の多様性などから、保存・継承において多くの深刻な問題をはらんでいる。本研究は、日本における理想的な近現代アートの収蔵品情報管理共有システムの構築に向け学際的なメンバーで多角的に議論・検証することを目的とする。 初年度は、保存科学者、保存修復家、現代作家、学芸員による学際的な研究メンバーで、近現代アートを所蔵する国立国際美術館と近現代アートに近い多様な材料による作品を収蔵している国立民族学博物館を訪れ、収蔵品情報の形式・保存システム、収蔵の際の工夫等について詳細な調査を行うとともに、意見交換を行った。収蔵品の分類においては、絵画、彫刻、写真といったように分野(ジャンル)ごとにすると、後々より複雑な新しい分野が生まれた際に分類と実際の作品の分野の齟齬が生まれていしまうリスクがあることが明らかになった。収蔵順に分類していく形式の方がより汎用性のある形式であることがわかった。また、民間企業による新しい収蔵品デジタルアーカイブサービス(日本通運と富士通の共同開発による「SmartMuse」)について、実際にデモンストレーションをして頂き、学際的研究メンバーで近現代アートの収蔵品管理情報に加えるべき具体的な項目や、修復履歴や貸出履歴と収蔵品情報をどのように関連付けるべきか等について議論・検討も行った。最新の分散型ネットワークであるブロックチェーンテクノロジーの応用の可能性について検討することを目的に、東京藝術大学デジタルツイン勉強会「アートの新潮流ーNFT って何?アートマーケットはどう変わる?」に参加し情報収集も行った。また、現代写真家に対して、自身の作品の保存・修復についてのインタビューも実施した。収蔵品情報管理において、保存の専門家や学芸員の視点と作家の視点では考えが異なる場合があることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響が懸念されたが、初年度、学際的な専門家達で、近現代アートもしくは近現代アートに似た素材による作品を所蔵する国内の主要博物館2館の調査を実施し、従来の収蔵品情報管理・共有システムの特徴や問題点について議論することが出来た。民間企業による新しい収蔵品デジタルアーカイブサービスのリサーチやブロックチェーンテクノロジーの応用の可能性についても検討出来た。更に、現代写真家に自身の作品の保存・修復についてのインタビューも実施することが出来た。収蔵品情報管理において、保存の専門家や学芸員の視点と作家の視点は異なる場合があることがわかり、近現代アートの収蔵品情報管理における難しさも明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究計画に基づき、引き続き近現代アートを所蔵する国内の主要美術館の調査を行う。具体的には、2年目には福岡市美術館や、福岡アジア美術館などの訪問・調査ならびに専門家達との意見交換を予定している。また、収蔵品情報の消失や改竄を防ぎ、永続的に保存していくための具体的な情報管理・共有技術についても、引き続き、情報管理の専門家や現代の先端的な情報技術であるブロックチェーン テクノロジーやNFTの専門家達との勉強会などを通して、積極的に意見交換を行う計画である。更に現代作家の視点からの検証・考察として、引き続き現代写真家に自身の作品の保存・修復についてのインタビューも実施する計画である。初年度は主にフィルムを用いる写真家にインタビューを行ったが、2年目からはデジタル技術も用いている写真家や遺族(財団関係者)へのインタビューも行う予定であり、近現代アートの収蔵品管理情報のあり方について学際的に検証を行っていく。 最終年度である3年目には、研究成果をシンポジウムもしくは展示を通して広く公開する。日本における学術研究拠点として、近現代アート保存のための専門家による国際的ネットワークであるINCCAの日本支部(INCCA JAPAN)の設立も目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国内の主要美術館の調査・見学が国立国際美術館と国立民族学博物館の2館に留まったため。2年目以降はコロナの感染が収束し国内出張に行きやすくなる可能性が高いため、福岡市美術館や福岡アジア美術館、金沢21世紀美術館などへの調査を実施したいと考えている。
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