2022 Fiscal Year Research-status Report
Animal Ethics Based on Virtue Theories in Greco-Roman World
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21K18350
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Research Institution | Osaka University of Health and Sport Sciences |
Principal Investigator |
中村 健 大阪体育大学, 体育学部, 准教授 (80612168)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | ポルピュリオス / 『肉食の禁忌について』 / プルタルコス / Richard Sorabji |
Outline of Annual Research Achievements |
3年間の間にポルピュリオス『肉食の禁忌について』の全4巻の下訳を終了することを計画している。2021年度中に2巻の半ばまで訳すことができていたが、2022年度は翻訳が難航し、2巻を翻訳し終えることができただけである。最終年度の2023年度中に4巻まで翻訳することを目指したい。 また、2022年度のもう一つの課題は、プルタルコスの動物倫理に関する論文を海外誌に投稿する準備を進めることであった。結果的に2022年度中に投稿することはできなかったが、ある程度準備を進めることはできた。具体的にはRichard Sorabjiによる、西洋古代における動物倫理を広範に論じた著作、Animal Minds & Human Morals (1993) の読解に努めた。この著作によれば、古代における動物の心の哲学と動物倫理の問題は、主にアリストテレスの主張「人間のみが理性と信念(ドクサ)を有する(他の動物は有しない)」に由来する。まず、アリストテレスや、この点において彼にしたがったストア派は、それぞれの仕方で、「では、動物たちは(理性を持たないのにもかかわらず)どのようにして世界に対処できるのか(どのようにして知覚的情報を処理して獲物を追う、あるいは外敵から逃げることができるのか)」という問題に直面する。この問題に直面して、アリストテレスやストア派は、様々な心的能力の概念(知覚や表象など)を改訂せざるを得なくなったというのがSorabjiの筋書きである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一つ目の課題である、ポルピュリオス『肉食の禁忌について』の翻訳作業が遅れている。主な原因は、第2巻後半の難解さのためである。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度中にポルピュリオス『肉食の禁忌について』を第4巻まで翻訳すること(下訳を済ませること)、プルタルコスの動物倫理についての研究論文を海外誌に投稿することが目標である。プルタルコスの議論そのものの分析や解釈はすでに終えているので、2023年度はSorabjiによる研究(Animal Minds & Human Morals, 1993)などを参照しつつ、アリストテレスやストア派による議論というより大きな文脈のもとにプルタルコスの議論を位置づける作業を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度もコロナ禍により自由に出張を行える状況ではなかった。今年度は、7月頃に京都大学古代哲学研究室主催の研究会、秋に日本哲学会でのワークショップ、3月にはICU哲学研究会でのシンポジウムに参加する予定である。
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