2023 Fiscal Year Research-status Report
日本人が苦手意識をもつ定冠詞を直感的に使えるようにするための効果的学習方法の開発
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21K18362
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
曾根 洋明 宮城大学, 基盤教育群, 教授 (60713550)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
フェラン ティモシー・ジョン 宮城大学, 基盤教育群, 教授 (10533276) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Keywords | 日本語母語話者 / フィンランド語母語話者 / チェコ語母語話者 / 定冠詞 / 弱定名詞句 / 定性 / 特定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
[1]昨年までの研究で,日本語母語話者は弱定NP(単数:唯一に同定が出来ない名詞句。複数: theが示す属性を持つモノ全ては指さない名詞句)の理解に劣ることが分かった。更に,複数弱定NPの運用力が特に弱いことが判明した。一方,昨年まで,フィンランド語母語話者とチェコ語母語話者の調査から,母語において進化した弱定NP感覚が第2言語である英語に転移するとの示唆が得られた。日本語母語話者においても,複数弱定NP感覚が醸成する可能性がある。しかし,これには時間がかかる。このため,戦略の一つとして,複数弱定NP自体の存在に意識を向けさせることも意図しつつ「the + 複数形名詞は,文脈から全てのものを指すことに無理がないと判断できる場合に「全ての…」を暗示する傾向がある」等と辞書等に記載するのが良いと提案する予定である。また,複数弱定NPを用いる場合の一例として,『構成要素』同士の境界が明白でない,または重なっていると話し手が感じる場合,一部の『要素』を指す代わりにthe + 複数形で『全体』を一括りに指す傾向があるとし,それを明示的に指導することを提案する予定である。
[2]昨年までの研究で,日本語母語話者である多くの学生や中学,高校の先生は,theを,話し手と聞き手の共通同定に基づく「定」であるモノではなく,単に「特定」なモノに付けると理解していることが判明した。更に日本語母語話者が用いるこの「特定」には存在のみ認知されているモノは含まれず,属性も認知されていなければならないことが分かった。話し手と聞き手が存在のみ知っている場合でも「定」を満たすことは多く,「特定」を介した理解には問題が多いことが判明した。「話し手と聞き手に特定 [単純存在以上]で,それによって両者が同じモノを指示でき,しかも話し手が聞き手に指示することを欲する場合にtheを用いる」と詳しく教えるのが良いとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究遂行に想定以上に時間を要している。当初,フィンランドおよびチェコにおいて調査を予定していたが,新型コロナウィルス感染拡大により,調査を延期。最終的に両国の回答者は調査会社を介して集めた。ただ,これにより,高い層から低い層まで全ての英語運用能力レベルをカバーすることができるようになり,より的確な考察ができるようになった。本研究は日本語母語話者向けの教育法開発のため,日本人学生および教育者の調査も行った。特に,「theは特定なモノに付ける」と理解している日本語母語話者が多いことが判明した後は,同話者における「特定な」の意味を詳細に解析した。成果の一部は2022年度大学英語教育学会国際大会で発表した。また2023年度の同大会においては「特定な」の意味を軸とした補正教育法の提案,および,複数弱定NPの教育法の提案を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度は,複数弱定NPの母語話者における生成思考プロセスの整理に集中したい。これをもとに,特に,日本の教育現場に提案する複数弱定NPの教育法を確立したい。
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Causes of Carryover |
過年度において研究法の見直しにより,フィンランドとチェコにおける現地調査をオンライン調査に変更したため予算に余裕ができた。このため,最終年度にあたる今年度は複数弱定NPの母語話者における生成思考プロセスを,米国等におけるオンライン調査によって進めたい。また,日本語母語話者である学生と教育者に対しても追加調査を多角的に取り入れて行いたい。なお,都度見直して,必要な研究作業を予算の範囲内で取り入れていきたい。
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