2021 Fiscal Year Research-status Report
Building a Financial Planning Theory for an Aging Society in the Era of the 100-year Lifespan
Project/Area Number |
21K18431
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
家森 信善 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (80220515)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
祝迫 得夫 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90292523)
上山 仁恵 名古屋学院大学, 経済学部, 教授 (90295618)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | ファイナンシャルプランニング / 金融リテラシー / 高齢社会 / 資産選択 / コロナ禍 / 助言者 / 金融経済教育 / 生活設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
ファイナンシャルプランニング論は、急激に研究が進展している家計金融論の重要な柱の一つである。本研究では、人生100年時代を迎えた日本においてどのような金融リテラシーが必要か(助言者の適切な利用を含む)を明らかにして、ファイナンシャルプランニング論の構築に挑戦している。 2021年度は、2021年8月から9月に「コロナ禍の高齢者の金融行動と金融リテラシーに関する調査」を実施し、当該調査を元にして、家森信善・上山仁恵「コロナ禍の高齢者の金融行動への影響と金融リテラシー-2019年調査と2021年調査の比較-」(神戸大学経済経営研究所 Discussion Paper Series No.2021-J13 2021年9月24日)を発表している。 同調査の特徴の一つは、(コロナ禍前の)2019年に実施した同種の調査の回答者1,000人を対象にしたことであり、それによりコロナ禍前後での高齢者の金融行動や金融リテラシーの変化を捉えることができる点である。 「コロナ禍の影響によって、資産運用の面での行動に変化はありましたか」と尋ねたところ、74%は変化がないと回答した。「預貯金を取り崩した」という回答が8.4%ある一方、「預貯金を増やした」(5.8%)や「株式投資・投資信託を増やした(新たに購入した)」(6.2%)も一定数おり、投資行動にも2極化がみられる。 2019年調査と比較すると、資産運用についてうしろめたいと感じる人は減少傾向が見られる。「生活設計(ライフイベントを見据えた将来の収支を含めたライフプランの策定)を意識していますか」という質問に対して、意外にも、考えているという回答が大きく減少した。自分の認知能力の低下に備えて、金融取引の面で気をつけたり、実行したりしていることがあるかを尋ねてみたが、「何も気をつけていない/実行していない」との回答率はほとんど変化していなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに、アンケート調査を実施し、その調査に基づく分析を家森信善・上山仁恵「コロナ禍の高齢者の金融行動への影響と金融リテラシー-2019年調査と2021年調査の比較-」(神戸大学経済経営研究所 Discussion Paper Series No.2021-J13 2021年9月24日)の形で発表することができ、最終的には、書籍(家森信善・ チャールズ ユウジ ホリオカ 編著 『コロナ禍と家計の金融行動 ポストコロナにおける家計の持続可能性をめざして』 神戸大学経済経営研究所 経済経営研究叢書(金融研究シリーズNo.10) 2022年3月)の形で公刊することができた。 また、WOS論文を発表することもできた。さらに、2021年10月に実施した調査に基づいて、家森信善・上山仁恵「住宅ローン利用者の自然災害に関する意識と金融リテラシー」(RIEB DP2022-J01 2022年1月)を発表したが、その成果は、金融庁「火災保険水災料率に関する有識者懇談会」(2021年12月6日)において報告し、同懇談会の「火災保険水災料率に関する有識者懇談会」報告書(2022年3月)において引用されるなど、政策的な意味を持つこととなった。 さらに、家森信善「基調講演:日本の家計の金融リテラシーとコロナ禍での金融行動」 神戸大学経済経営研究所シンポジウム「ポストコロナの家計経済を考える-持続可能な地域社会を創るために-」(2021年11月30日)や家森信善「講演:生きる力を育む金融・保険教育― 難しく考えすぎないで!-」(生命保険文化センター・日本損害保険協会 2021年度 教員対象 夏季セミナー「くらしとリスク管理」2021年8月16日および8月19日)などの形で、研究成果の社会還元にも努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には、2021年度に実施したアンケート調査結果を使って、一層の分析を進める。さらに、2019年に日本で開催されたG20で優先的な政策課題として明記された、「生涯にわたるFPのサポート」を幅広い観点から分析する。高齢者にとって特有の金融問題の一つは、若年層とは異なって、どのように金融資産を取り崩していくかという問題である。たとえば、リバースモーゲージのように、保有する住宅資産を老後の生活のために活用できる金融商品の適切な販売のあり方(金融機関経営のあり方を含む)を考える必要がある。 そこで、金融資産の取り崩しや活用の方法に影響を与える金融リテラシーや、そうした行動において必要とされる金融助言者の役割に関してのアンケート調査を実施し、高齢者に必要なFPや金融業・助言業についての調査を行う。必要に応じて、金融機関職員側の意識についても確認する調査を実施する。その調査結果に基づいて、高齢者に対する支援の観点から望まれる金融商品や金融機関のビジネスモデルを提言する。 2023年度は、前年度までの分析を研究論文として精緻化を進め、国内外の学会や専門誌において発表するとともに、社会に向けた成果を還元する。
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Causes of Carryover |
初年度のアンケート調査について、フォローアップ調査の形をとることで、質問数を抑えることができたことから、費用が少なく済んだ。今年度および来年度に、その節約分を生かして、複数の調査を行う予定である。
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