2023 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on "Multitasking" in Time Use and Its Background and Consequences
Project/Area Number |
21K18450
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石田 賢示 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (60734647)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 生活時間 / マルチタスク / 経験サンプリング法 / ウェブ調査 / 社会生活基本調査 / デジタル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、一般的な社会調査で把握が難しい「マルチタスク」を、リアルタイムでの調査(経験サンプリング法)により測定するとともに、その背景、影響等について検討した。3年間の研究で、独自の社会調査を実施しつつ、生活時間に関する公的統計調査の個票データの分析をおこない、研究目的の遂行を目指した。 2021年度には、その後の確率標本調査の予備調査としての位置付けも兼ねつつ、生活のデジタル化と生活時間、および時間意識にかんするオンラインモニタ調査を実施した。調査データの分析結果から、さまざまなデジタルツールの利用頻度が多い人々は、生活時間の圧迫感が相対的に強い一方、時間を効率的に使っている様子も明らかとなった。 2022年度には、本研究課題の主眼である確率標本にもとづく経験サンプリング法を応用した全国調査を実施した。調査の結果、時間の圧迫感をより強く抱きやすいのが女性であることが明らかとなった。また、性別、年齢層にかかわらず、多くの対象者が友人と過ごす時間や余暇時間を増やしたいと考える一方、仕事の時間を減らしたいと考えていることが明らかとなった。 2023年度には、独自調査のさらなる分析と「社会生活基本調査」の個票データの分析を進めた。前者については、リアルタイム調査の分析を通じ、一定時間のなかでより多くの活動に従事するほど時間が圧迫されていると感じやすいことが明らかとなった。また後者の分析結果からは、デジタル機器の利用により短時間(15分間隔)での活動の切り替えが生じにくくなる一方、その効果は女性、管理職、子育て中の親など、元々マルチタスク状況に置かれやすい場合には弱まることが明らかとなった。以上を総合すると、マルチタスク状況は人々の時間の圧迫感を強めるものの、デジタル化がそれに寄与していると結論付けることはできず、社会階層との相互作用に着目する必要があることを示唆している。
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