2021 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な医療体制にむけた医療職の多様な働き方に関する国際的調査研究への展開
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21K18462
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Research Institution | Fukuoka Nursing College |
Principal Investigator |
樗木 晶子 福岡看護大学, 看護学部, 教授 (60216497)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 聖子 九州大学, 医学研究院, 教授 (10253527)
澤渡 浩之 広島大学, 医系科学研究科(保), 助教 (30757034)
錦谷 まりこ 九州大学, 大学病院, 学術研究員 (40327333)
工藤 孔梨子 九州大学, 大学病院, 助教 (50644796)
中島 直樹 九州大学, 大学病院, 教授 (60325529)
磯部 紀子 九州大学, 医学研究院, 教授 (60452752)
川波 祥子 産業医科大学, 産業医実務研修センター, 教授 (70449940)
樗木 浩朗 保健医療経営大学, 保健医療経営学部, 教授(移行) (70607093)
伊豆倉 理江子 九州大学, 医学研究院, 学術研究員 (80805292)
永吉 絹子 九州大学, 大学病院, 助教 (90761015)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 持続可能な医療体制 / 働き方改革 / 医療環境の国際比較 / キャリアの継続 |
Outline of Annual Research Achievements |
医学部の女子学生比率は30%を超えているにもかかわらず、医師の長時間労働が常態化し家事育児を女性が担うことの多い本邦では、就労している医師における女性比率は20%である。このことは、労働力率M字カーブにも表れているが、30~40歳代の子育て世代での女性医師が離職することも関与している。医師不足を緩和するために女性医師の臨床現場定着及び復帰支援が文部科学省大学改革等推進事業にて公募され, 2007年に女性医療人きらめきプロジェクトを九州大学病院において立ち上げた。その際、「医療人の健康と働きがい」を調査し、600人から回答を収集した。10年経過し「女性医療職におけるキャリア継続の10年の変遷を追う」ため挑戦的研究 (2019~20年度、延長継続中) により北部九州5大学において医療職の労働環境や健康に対する意識調査を行い約3000名のデータを収集し、解析中である。その過程で、女性医師支援のみでは根本的解決に至らず, 医師全体の働き方の変革なしに持続可能な医療体制は困難であることが明確になってきた。海外でも本邦と同様に苦悩している国もある一方で、女性医師の能力を十分に活用し医療体制のバランスが良い国もみられる。本申請では, 社会的・文化的背景の異なる海外施設において医療職の現状や労働環境に関する調査を展開し, 異なる文化・社会の国々における現状を調査する。それを研究代表者が行ってきた本邦の10年間の医療職の労働環境や健康に対する意識調査の結果と比較し,グローバルな視点から打開策を構築することを目的としている。また、講演会やワークショップ, 現地調査なども行い諸外国の研究者との交流を図ると共に、本邦と比較した結果を我が国においても広報し、医療人の心身の健康を維持しながら男女を問わずその能力を最大限に活かせる方策を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先ずはフィリピンと本邦との医療制度の違いをふまえ医療人の心身の健康状態、職場環境やストレス状況について比較検討するために、これまで5大学医学部(九州大学、佐賀大学、福岡大学、久留米大学、産業医科大学)において2020年3月から11月に調査した調査票をもとに英語版を作成した。九州大学及びフィリピンのSt. Luke's Medical Center倫理委員会での承認後、九州大学情報統括本部が運営する安全性の高いウエブアンケートシステムを用いてSt. Luke's Medical Centerの医療職200人に配信した。2022年3月時点で70人の回答が得られたが、100人を目指し回答期間を6月まで延長している。従って、3月までに粗集計を行う予定であったが、6月にはアンケート結果を集計し遅れを修復する予定である。 一方でコロナ禍でも開催できるウエブ版啓発講演会を開催し広報活動を推進した。まず、2021年7月、多様なキャリアの有り様として基礎医学分野で活躍する九州大学生体防御医学研究所の池田史代氏が「小分子ユビキチンによる炎症反応制御機構」と題して若手医療人を対象に基礎医学の醍醐味を語った。11月には学生交流会を開催し「自分にブレーキをかけないで!あなたのキャリアを応援します」と題し九州大学医学部神経内科学の磯部紀子氏が学生や若手医療人に対して何事にもチャレンジする精神と日本を飛び出し世界と繋がる事をアピールした。2022年2月には国際医療部アジア遠隔医療開発センターと共同で「医療における国際交流・貢献の現状と未来」と題して国立国際医療研究センター国際医療協力局より「女性の健康のための国際協力:これまでとこれから~開発途上国とグローバルレベル、そして日本~」と題して基調講演を行った後、パネルディスカッションにて医療人と国際協力について議論を深めた。このように啓発活動は順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
フィリピンとの交渉がコロナ禍の為に遅れ調査期間を延長せざるを得なかった。今後はコロナ感染症も落ち着くことが予想されるので、フィリピンでの調査の遅れを取り戻し、当初の計画通り実行できる予定である。 2022年5月には日本側のデータ検討会を行い、まずは、日本でのデータの論文化を進める。6月にはフィリピンでのアンケート収集も終わるので、7月にはフィリピン側の粗集計データを作成し、その検討を前もって日本チームで行っておく。8月には研究班会議を行い、その後にフィリピンチームとのウェブ会議を開催し、St. Luke's Medical CenterのCarolina Linda Tapia先生、Vittoria VD. Velasquez先生と両国の調査結果を比較検討する。その結果をもとにフィリピンチームでの広報活動や学会発表、論文化も推進する。また、研究代表者の樗木が顧問, 研究分担者の加藤がプログラム責任者を務める九州大学病院の医療人支援プロジェクトである「きらめきプロジェクト」における啓発講演会(6~7月)、学生交流会(10~11月)、スタッフ交流会(毎月)においても、本研究の成果発表を行い、情報を共有する。グローバルなレベルで医療界のダイバーシティを推進できるように国際学会発表や広報活動も行う予定である。12月頃には2023年度に向けたフィリピンでの現地調査, 二国間交流会について原案を作成し、両国で行った調査結果について詳細な統計学的検討を行い、データ結果を共有し2023年度の現地での対面での検討に備える。また、コロナ禍が治まっていれば、2023年1~3月にはフィリピンチームの来日を実現させ2023年度にむけたフィリピンでの現地視察時の事前交流を行う。可能であれば新たにアメリカの研究者とも連携する。この予定で研究を進めることにより、最終的には2022年度の遅れを取り戻すことができる。
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Causes of Carryover |
これほどコロナ禍が長引くことを予想していなかったため、2021年度に、最初に交流を始めるフィリピンとの現地での打ち合わせやフィリピンチームの来日を予定していたが、実現できなかった為計上していた日本―フィリピン間の旅費を2022年度に使用する予定である。また、アメリカの研究者とも打ち合わせや現地視察を対面で行う事を想定していたが、2021年度には施行できなかった。2022年4月時点でもコロナ禍が続いているが、2022年度後半から年末にかけては、フィリピンやアメリカの研究者とお互いに現地視察や対面での検討会を開催することを予定しており、2021年度に使用する予定であった旅費は2022年度に使用できると考えている。また、学会での発表も現地であることを想定して旅費を計上していたが、ウエブ開催になることが多く、この予算計上していた旅費も2021年度には使用できなかった。研究班会議もウエブにて開催したため、会議費は未使用となった。2022年度には相互理解を深めるために班会議を福岡で対面にて開催し、学会参加も活発に行うことにより、2021年度未使用であった諸経費を使用できると考えられる。
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Research Products
(14 results)