2021 Fiscal Year Research-status Report
eスポーツにおけるVR機器の導入が身体イメージに与える影響を解明する
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21K18531
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Research Institution | Nippon Sport Science University |
Principal Investigator |
波多腰 克晃 日本体育大学, スポーツ文化学部, 教授 (20468797)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 映画教育 / メディア / eスポーツ / 仮想空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はドイツ第二帝政期からヴァイマル期の公衆衛生としての健康的な「みせる身体」の形成と展開を解明することによって、今後、eスポーツおける仮想現実(VR)の導入がもたらす身体イメージへの影響を教育思想史的に関連させて解明することを目的とする。ドイツ・ナチズムイデオロギーは当時の青少年の身体を「みせる身体」として政治利用してきた。eスポーツにおいて偏った思想を背景とした新たなヒーローが生み出される可能性の抑止力として、ドイツにおける当該時期の大衆の心性を焦点化し検討する。 初年度である今年度は、ドイツにおける大衆の心性に注目するために、まず今井の映画に関する先行研究を検討した。これに加えて、VR機器が脳に及ぼす影響についてJ.ベイレンソンによるVRが脳にもたらす影響を中心に検討した。 20世紀初頭、ドイツにおいて映画視聴は「驚き」として経験されている。この「驚きの経験」は過去においてテレビの普及、漫画が大量に読まれた時ときにも繰り返してきたという今井の指摘にあるように、VR機器が幅広く普及するようになれば、同様の「驚きの経験」が繰り返されると考えられる。今井の映画視聴に関する研究では主に子どもたちに与える教育的な意味とナチズムのイデオロギーに利用されていた背景が明らかにされている。「驚きの経験」は同時に「夢の世界」の現実感を作り出している。夢であると理解しつつ、なお夢を見続けている状態、すなわち「映画を観ている私は映画の世界と一体となり映画の世界のなかで一喜一憂する」という今井の指摘は現代のVR機器を活用した仮想空間に応用可能な指摘であることが確認できる。まさに、VR機器の活用の問題点は今井の映画研究の指摘から多くの解釈が可能となりうる。とはいえ、現実と仮想の世界との「つながり」が強くあらわれるVR機器を用いた場合については引き続き検討する余地が残されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来であればドイツケルン体育大学の図書館にて資料の蒐集、整理を予定していたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止策のため、渡独ができず、大幅に計画を変更せざるを得なかった。そのため計画を変更し、本研究に関連する論文を蒐集、整理し検討した。たしかに計画に遅れが出ているものの、幅広く関連する情報を入手することができ、次年度以降に役立つ方向性が開けた点においては意義のある進捗であったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に果たせなかった現地の調査を予定している。とはいえ渡航規制が続く場合には、研究仲間から情報を入手し、可能な限り研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、今年度予定していた現地の調査ができなかった。そのため、次年度に向けて複数箇所に渡航を予定している。
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