2021 Fiscal Year Research-status Report
「痛いの痛いの飛んでいけ」の心理的・物理的効果とわらべ唄の存在意義の検討
Project/Area Number |
21K18534
|
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
新井 典子 (麻生典子) 神奈川大学, 人間科学部, 准教授 (70570216)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 麻衣子 早稲田大学, 理工学術院, 客員次席研究員(研究院客員講師) (10802580)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | 痛み / タッチ / わらべうた |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、熱刺激や生理指標の選定、実験条件、実験手続き、装置等の基本的な実験計画の予備的検討を行った。COVID-19変異株の流行により、大学内での対面実験の実施が難しい期間も認められたが、少数の実験データから、次年度の実験計画につながるアイディアを得ることができた。 本研究のアウトリーチ活動としては、令和3年9月から令和4年2月にかけて、地域の乳幼児を持つ親子を対象に、ファンクショナル・タッチペアレンティング(FTP)講座を月1回定期開催した。FTPは、わらべ唄や親子の身体的遊び、ロールプレイ等で構成される子育て支援プログラムである。講座に参加した母親は、「コロナ禍で外出できなかったが、初めて子連れでFTP講座に参加した。親子で楽しめ、育児に自信がついた。」と語っていた。社会的に孤立しながら、幼い子どもの育児に奮闘している親子にとって、本講座は、社会とつながる大変貴重な機会となった。また、育児に悩む親の中には、昔ながらの手遊びやわらべ唄、子守歌を全く知らない者もいた。子どもが泣き止まずに困った時には、親が仕方なく乳児にスマフォやタブレットを与えてしまう状況も語られた。親子の愛着形成や子どものメディアへの早期暴露を防ぐためにも、親子が一緒に童心になって、わらべ唄や身体遊びを楽しめるFTP講座を継続的に開催する意義を強く感じた。 一方、実践者に対するアウトリーチ活動として、日本精神衛生学会において、社会的養護に携わる支援者に対して、身体接触を通じた子育て支援の重要性を講演した。 研究実績としては,日本発達心理学会において学会発表を行った(大学生における乳児の泣きに対するあやし行動の検討:性差と接触部位に注目して)。また、和文雑誌である子育て研究に、論文が掲載された(親と子の身体接触と心のつながり:アフターコロナの時代に向けて)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置のため、学生を対象とした対面実験が、ほとんど実施できなかったため、研究の進捗状況はやや遅れていると判断した。実験の性質上、オンライン実験で代用することが難しいため、感染対策に十分に配慮しながら、慎重に対面実験を実施するように心がけていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、「痛いの痛いの飛んでいけ」の心理的効果を有効に検証するための、実験計画の予備的検討に従事してきた。現段階において、いくつかの重要な示唆を得ることができたため、次年度の本実験に役立てていきたい。第1に、熱刺激は、倫理的配慮や温度の正確性、知覚の個人差への配慮が不可欠であることが分かった。上昇系列での熱刺激の提示や熱刺激装置の作成、フォトセンサーの導入を行い、改善を図っていきたい。第2に、実験者は、痛み刺激を与える者と「痛いの痛いのとんでいけ」を行い慰める者の二人体制にする必要性が認識された。当初の実験は、実験者一人体制で行ったが、痛みを与える者と慰める者が同一という、ドメスティックバイオレンスの構図になる懸念が指摘されたためである。従って、本来の「痛いの痛いの飛んでいけ」の現象を忠実に再現するため、今後は、実験者を二人体制に統一し実験を行っていく予定である。第3に、「痛いの痛いの飛んでいけ」の構成要素(タッチ・まじない・飛ばし行為等)のうち、痛みの緩和に最も貢献する主要な要素を明らかにする必要性が認識された。今後は、理論的背景をふまえ、主要な要素を同定し、仮説を立案する予定である。 以上より、次年度は、実験計画をさらに推敲しながら、本実験に着手し、データ収集を実施する。今後は、COVID-19の感染状況によっては、対面実験の実施が困難になる事態が発生する可能性がある。従って、少ない実験データを有効に活用するためにも、先行研究の理論的背景及び実験手続き、実験装置等の検討を丁寧に行い、実験計画のブラッシュアップを図る。それと同時に、痛みの知覚及びタッチ、わらべ唄の関連性を扱った文献等の検証を進め、それらを基にしたメタ分析についても行う。以上を通して、痛いの痛いの飛んでいけの学術的・社会文化的意義について、論文執筆に着手する予定である。
|
Causes of Carryover |
本年度は、新型コロナウィルスまん延防止等重点措置のため,大学の方針が打ち出され、対面実験が十分に行えなかった。実験計画は、予備的検討にとどまり、本実験を行うことができなかったため、謝金や人件費、実験装置の物品費が持ち越しになった。2022年度は、本年度に比べてCOVID-19の感染状況の改善の兆しが認められるため、実験計画の検討を進め、本実験を積極的に行っていきたい。
|
Research Products
(3 results)