2022 Fiscal Year Research-status Report
「痛いの痛いの飛んでいけ」の心理的・物理的効果とわらべ唄の存在意義の検討
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21K18534
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
新井 典子 (麻生典子) 神奈川大学, 人間科学部, 准教授 (70570216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 麻衣子 早稲田大学, 理工学術院, 日本学術振興会特別研究員 (10802580)
佐々木 恭志郎 関西大学, 総合情報学部, 准教授 (70831600)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 痛いの痛いの飛んでいけ / おまじない / 痛み / わらべ唄 / 身体接触 / 乳幼児 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「痛いの痛いの飛んでいけ」の心理学的効果とわらべうたの存在意義を検討することである。2022年度は以下3点の研究成果を得た。 (1)「痛いの痛いの飛んでいけ」の心理学的効果に関しては、おまじない音声の有無が皮膚コンダクタンスレベルと痛みの主観的評価に及ぼす影響を実験的に検討した。おまじない音声あり群の方が統制群よりも、痛みの増幅傾向が認められた。この実験より、おまじないの音声が痛みの手がかりとして認知されたことや、他者からの援助を引き出すために痛みを強く知覚したことが考察できる。(2)わらべうたの存在意義に関しては、子育て経験者と大学生を対象にして、幼少時にわらべ唄を歌ってもらった経験とその効果に関して半構造化面接を行った。面接時の語りデータより、わらべ唄を受けた経験は、心の奥底に刻み込まれたもので、普段は意識しにくい性質があると考えられた。わらべ唄の経験を顕在化させるために、複数回の面接が不可欠であること、幼少時を回顧しやすい質問項目の工夫を来年度以降の課題とする。(3)社会実装と研究業績については、社会的養護に携わる支援者に対し、わらべ唄と身体接触に関するワークショップを2回実施した(日本精神衛生学会の招待講演)。また、乳幼児をもつ養育者に対して、わらべ唄等の子育て支援講座を3回実施した。電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーション基礎研究会(HCS)と日本発達心理学会にて学会発表を行った。和文雑誌である神奈川大学人文学研究所報に論文が掲載された。加えて、関連研究としてこれらの研究を支えるプラクティスに関する意見論文が査読付き国際誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスによる感染防止策が緩和され、対面実験が可能になったが、実験協力者の募集方法や範囲が制限されたため、データ収集に苦慮する結果となった。今後は、募集方法や対象範囲、実験協力に至るまでの手続きを見直し、十分なデータ数を確保できるようにしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)「痛いの痛いの飛んでいけ」の心理学的効果の検討 音声の逆再生刺激や音素をランダム化した刺激、分銅を使った圧力刺激等を使った実験を行う予定である。それぞれの実験では、痛みの顕著性を高める音の性質や情動二要因論を用いた説明可能性等に関して、研究知見を得る。実験結果の一部は、2023年8月の国内学会にて研究発表をする予定である。また、一連の実験データをまとめ、「痛いの痛いの飛んでいけ」の認知的メカニズムに関する研究論文の執筆を目指している。 (2)わらべうたの存在意義の検討 3つの研究を計画している。第1に「痛いの痛いの飛んでいけ」の文化比較研究である。日本と中国、アメリカの3か国の人々を対象に、痛みを緩和するおまじないの言葉かけと行為に関する多様性と普遍性を質的に検討する。第2にわらべうたの世代継承性の検討である。大学生と子育て経験者を対象に半構造化面接を行い、幼少時のわらべうたの現実体験とわらべ唄を歌ってくれた人に対する表象イメージの関連を質的に検討する。第3にオープンスペースでのわらべうた経験が、子どもに与える効果の検討である。地域の子育て広場に来所する乳幼児を持つ親子に対してわらべ唄を提供し、親子の心理学的効果を検討する。 今年度は最終年度であるため、わらべ唄の存在意義について、本研究で得られたすべてのデータをふまえて、総合的な観点から考察を行う予定である。研究成果は、2024年3月に行われる国内学会での研究発表と、論文及び図書等で公表する予定である。
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Causes of Carryover |
旅費及びその他の費目において支出が減額した。これは、新型コロナウイルスの感染予防措置のため、アウトリーチでの対面実験が行えなかったこと、国内外の学会出張の機会が少なかったこと等が考えられる。次年度は、規制が緩和されたため、地域等に広くリクルートを行い、研究協力者の確保と研究成果の公表を行っていく予定である。
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Research Products
(10 results)