2023 Fiscal Year Annual Research Report
知的障害児(者)における「内言」の可能性と新たなコミュニケーションモデルの検討
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21K18544
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Research Institution | Ueda Women's Junior College |
Principal Investigator |
大塚 美奈子 上田女子短期大学, その他部局等, 准教授 (10884398)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 中度・重度知的障害児者 / コミュニケーション障害 / 表出言語 / QOL / 筆談援助法 / 自閉スペクトラム症 / 内言 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.中度・重度知的障害児(者)91名(男性45名、女性46名)を対象とし、筆談援助法を通じて書字した「言いたいこと」の内容から計量テキスト分析を用いて思考の共通点や障害に関する捉えについて検討した。結果、【障害者として生きる意味】、【人の心にとって大切なこと】、【ダウン症として生まれた仲間】、【話を聞く・言葉を話す】の4つのテーマが抽出され、共通項として「仲間意識」と「障害受容」が示唆された。知的能力障害と脳性まひは、抽出語が類似しており、「差別」や「ソーシャルインクルージョン」の考え方を支持する内容が見られた。ダウン症は「出生前診断」についての抽出語、自閉スペクトラム症(ASD)は「言葉があるのに出てこない」や「考えているのにうまく表現できない」等コミュニケーションに関わる障害特性に関する抽出語が多く見られた。抽出語の分析から、知的障害においても自分の考えや言いたいことの『内言』はあるが、表出する段階でうまくいかないという特徴があることが推察された。 2.知的障害のある思春期のASD女子Aに対し、筆談援助法を用いて意思を読み取り、「おしゃれしたい」という意思に添った支援を家庭で行い、QOLの向上についてA本人の行動変容及び自己評価と母親の意識変容から検討した。結果、本人の意思が読み取れたことで母親の意識が変容し「おしゃれ」に対する肯定的な支援が行われ、Aが母親の支援に対し肯定的な評価を示した。ASDであるAは、表出言語は少ないが『内言』があり、表出がうまくいかないため、内面を理解されないことが推察され、意思を尊重した支援の重要性が示唆された。現在、ASDについての当事者研究が進んでいるが、高機能がほとんどで知的障害のあるASDはほとんど見られない。その点で、意味のある事例だと考えられる。当事者に共通した言語表出時点での課題について更に検討していく必要がある。
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