2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K18604
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
寺嵜 亨 九州大学, 理学研究院, 教授 (60222147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 良 九州大学, 理学研究院, 准教授 (60363347)
堀尾 琢哉 九州大学, 理学研究院, 准教授 (40443022)
荒川 雅 九州大学, 理学研究院, 助教 (10610264)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 液滴 / 真空 / 蒸発冷却 / 過冷却液体 / 相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
おおむね研究計画に沿って、水液滴へのポリオール混合効果、水液滴のラマン分光、液滴の微小化を進めた。ポリオール混合効果では、エチレングリコールのモル分率を変えながら凍結時間を測定し、直径40μmの液滴について、純水での6.5msが2%混合液では11.5msまで遅延することを明らかにした。また、グリセロールの混合でも、同じモル分率で同程度の遅延となり、エチレングリコールとの顕著な差異は見られなかった。遅延の原因としてポリオール混合による蒸気圧低下が考えられるため、蒸発速度の実測を試みた。大気下のイオントラップで液滴を捕捉し、数秒にわたって液滴径が小さくなる様子を観察したが、純水と2%混合溶液とで有意な差はなく、蒸気圧の低下は凍結遅延の主要因ではないと結論した。このことは、むしろポリオールの混合で均質凍結温度が低下するとの予想と合致しており、水の水素結合ネットワーク内に混入したポリオール分子が凍結核形成を阻害するとの仮説に至った。一方で、蒸発冷却過程において、液滴径の測定精度の向上が望まれている。その手段として、液滴外周に共鳴するラマン散乱信号の縦モードの実測で、液滴径の高精度計測が可能となる。これまで大気圧下で行ってきたこの測定を、光学系の改良などの結果、目標としていた真空下での測定にまで推し進めた。この成果は、スペクトル形状の測定をさらに進めると、液滴温度の非接触測定の実現にもつながると期待される。なお、液滴の微小化は、従来の直径50μmから、30μm程度まで進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に沿って、ポリオール添加効果の実験と真空中でのラマン散乱測定の実験を成功させ、それぞれ成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、実験研究では、液滴径の高精度測定を解析の面でも詰めてゆく。また、ラマン散乱のスペクトルと温度との関連づけを行ってゆく。さらに理論面では、水素結合ネットワーク中のポリオール分子が、水の凍結核形成を阻害するとの仮説について、分子動力学シミュレーション等での検証を進めてゆく。また、塩化リチウムなどの塩の添加効果についても、実験を進めてゆく。
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Causes of Carryover |
当初計画の内、液滴径の微小化について、現状の装置の改良である程度まで進めたが、一層の微小化を目指して新たな液滴発生装置の導入を計画する。また、学会等がすべてオンライン開催となったため、旅費を次年度に繰り越して新たな発表の場を計画する。
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Research Products
(3 results)