2023 Fiscal Year Annual Research Report
Non-equilibrium mechanics of cellular symmetry and migratory principle by active gel physics
Project/Area Number |
21K18605
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
前多 裕介 九州大学, 理学研究院, 准教授 (30557210)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | アクティブマター / 細胞骨格 / 人工細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアクチン(細胞骨格タンパク質)とミオシン(モータータンパク質)を細胞サイズの微小液滴に封入した人工細胞技術を用いて,細胞の自律的な運動と変形をソフトマターなど物理的見地から明らかにすることを目的とした.研究計画の第一段階として,人工細胞内で発生するアクチン波と自律的運動をアクティブゲル理論から明らかにする理論解析を行った.力のつり合い,流れの運動量保存,構成要素の質量保存則,の3つの保存則で構成されるアクティブゲル理論を構築し, フェーズフィールドモデルに基づく数値計算を行い周期的なアクチン波が現れる条件を探索した.その結果,アクトミオシンの力とアクチンの重合速度が一様な流れから周期的なアクチン波が出現するために主要な要因であることを明らかにした(Phys Rev Research 2023).さらに,アクチンと人工細胞の膜とが物理的に相互作用する系を新たに構築したところ,アクチン波の収縮力が基盤に伝達されることで人工細胞が自発運動することを見出した.人工細胞の運動方向に対して逆向きに流れるアクチン波が膜との物理的に相互作用することで界面摩擦が生じ,その反作用となる壁から人工細胞に及ぶ力が自発運動の駆動力となることを理論モデル解析とその実験検証から明らかにした.さらに,液滴を挟む基板の間隔を狭めると運動速度が減少することから,界面摩擦と粘性抵抗のバランスで運動速度が定まることをアクティブゲル理論から説明した(Proc Natl Acad Sci USA 2022).本研究で示した「運動する人工細胞」は周囲環境との力学的相互作用を介した運動モード(非接着型運動)の再構成に位置付けられ,人工細胞のシンプルさゆえに詳細な理解を可能としている点は特筆すべきである.生体内の狭い空間を運動するガン細胞の非接着型運動にも関連するため,将来的には医科学への波及も期待できる.
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