2021 Fiscal Year Research-status Report
メタンハイドレート賦存域での海底湧出ガス採取方法の確立
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21K18739
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 聡 北見工業大学, 工学部, 教授 (00174673)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | メタンハイドレート / 湧出ガス / 海洋調査 / 海洋資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
海底から湧出するガスの探査とガス資源量把握のために,過去に取得されているデータ解析および湧出ガス観測海洋調査を行った。過去に取得したデータの解析については,オホーツク海網走沖を主対象とした。網走沖では,過去の調査によって250ヶ所以上のガス湧出地点を観測している。また,水深550mおよび750m程度の2地点においては,ROVによる湧出ガスの撮影を行っている。画像データを解析したところ,水深550mのマウンド地形の100×200mの範囲において,湧出口を22地点で確認できた。湧出口密集域の直径20mの範囲の湧出量を画像から見積もったところ,1日当たりの湧出量は約2,500m3と見積もられた。この量は,一般家庭1年間消費量7軒分に相当する。 湧出ガス調査は,北海道大学水産学部附属練習船「おしょろ丸」を利用し,太平洋日高沖の海域において行った。調査を行った18×27kmの範囲において,約10地点で湧出ガスが確認されたが,その数は過去に調査を行った網走沖や十勝沖に比較して少ないものであった。ただし,前年に同海域で行った調査で観測されたガス湧出地点と同一地点であり,継続してガスが湧出していることが確認された。また,この調査では,ガス湧出地点において重力式コアラーによる海底堆積物の採取を行い,日高沖で初めてメタンハイドレートの採取に成功した。 湧出ガスの採取方法を検討するために室内実験を行った。網構造の模型回収装置を試作し,網目寸法の違いによるガス気泡の漏出性,水流による抵抗値の測定を行った。ガス気泡の漏出性の確認では,網目寸法が4mm以上となるとガスの漏出が顕著になることが分かった。また,水流の抵抗については,網構造にすることによって抵抗値を半分以下に低減することができ,回収装置を網構造にすることにより,海流による抵抗をある程度低減できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間内での主たる研究実施計画は,1)過去に取得した海洋観測データの解析に基づく湧出ガス量評価,2)海洋調査による湧出ガス探査と湧出継続性の確認,3)湧出ガスの採取方法の検討と室内実験,4)室内実験に基づいた海洋実験用の回収装置の製作と湧出ガス回収実験である。 1)のデータ解析に関しては,オホーツク海網走沖の限られた範囲ではあるが,湧出ガス量の評価を行うことができ,解析範囲を広げることによって,広域的な湧出ガス量評価に繋げることが可能となった。2)の海洋調査に関しては,太平洋日高沖の海域のおいて湧出ガス調査,海底地形調査,海底堆積物の採取と分析を行った。調査地点は1海域のみであるが,湧出ガスの継続性の確認や,海底微地形と湧出ガス地点の関係,ガス湧出地点でのメタンハイドレートの採取などの成果を挙げた。3)の湧出ガス採取方法の検討に関しては,網構造の小型模型回収装置を試作し,網目寸法の違いによるガス気泡の漏出性,水流による抵抗値の測定を行った。網目寸法が1,2,4mmの3種類の網目状膜を用いたが,網目が小さいとガス気泡の漏出が発生しないことが確認された。また,使用した範囲の網では,網目寸法によらず水流による抵抗値が,網構造でないものよりも3分の1程度に低下することが確認でき,網構造の有効性が確認された。4)の海洋実験用の回収装置の製作と湧出ガス回収実験については,3)の室内実験結果をもとに,より大型の回収装置の試作を計画中である。 以上のことを総合的に判断して,「本研究課題はおおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画である1)過去に取得した海洋観測データの解析に基づく湧出ガス量評価については,解析範囲をオホーツク海網走沖,太平洋十勝沖および日高沖の過去の調査範囲全域に拡げ,ガス湧出量の概算見積もりを行う。 2)海洋調査による湧出ガス探査と湧出継続性の確認については,今年度も太平洋日高沖において海洋調査を実施予定である。調査には北海道大学水産学部附属練習船「おしょろ丸」を利用し,前年度の調査範囲を含め観測範囲を拡げ,海底からの湧出ガスの観測と海底地形調査を行い,ガス湧出地点と海底地形との関係を明らかにする。また,海底堆積物の採取も行い各種分析を行う。 3)湧出ガスの採取方法の検討と室内実験については,より大型の回収装置の試作や網目寸法・網種の違いによるガス漏出性の確認や回収効率,水流の抵抗の確認などを行う。実験は,深さ3m程度の大型水槽を用いて,湧出ガスの上昇速度や気泡径の計測などを水中撮影動画解析などにより行う。 4)室内実験に基づいた海洋実験用の回収装置の製作と湧出ガス回収実験については,室内での模型実験より得られた成果に基づいて,回収装置の大型化を図る。なお,実際の海洋での回収実験については,海底への装置の設置や海流対策などのために多くの費用が必要となる恐れもあり,大型水槽を用いた検証に留まる可能性もある。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由については,実験物品の調達において半導体不足等の要因により試験機器の納期が大幅に遅れていることや,研究成果の発表においてコロナ感染症の拡大により学会発表がオンラインでの開催が主体となったため,旅費の支出が生じなかったことなどが挙げられる。 前年度未使用分は翌年分と併せて,室内実験における模型回収装置の試作や計測器具の購入に使用する。また,海洋調査に係る調査旅費や調査物品,成果発表旅費に未使用分を含めて使用することによって,当初計画を通りの研究を遂行する。
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Research Products
(9 results)