2021 Fiscal Year Research-status Report
埋もれた地震波形記録の発掘 -地震計による将来の斜面崩壊の自動検知に向けて-
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21K18792
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土井 一生 京都大学, 防災研究所, 助教 (00572976)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 斜面崩壊 / 地すべり / 地震動 / 連続波形記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
地震計ネットワークによって斜面崩壊が記録されているかどうかについて明らかにするため、いつ、どこで、どのようなサイズの斜面崩壊が発生したかについて事例収集をおこなった。本年度はどのような事例を収集すればよいかについての手掛かりを得ることも兼ね、2015年から2017年までの全国紙、地方紙の新聞記事を検索した。 続いて、これらのうちおおよその発生時刻と規模が分かっている事例、および、研究代表者が見聞きした事例を合わせ22事例について、斜面崩壊の発生場所や発生時刻に近い地震波形記録を収集し、波形の形状やランニングスペクトルを調べ、既往研究において観察されている斜面崩壊に由来する地震波形の特徴と合致する波形について斜面崩壊を検知した可能性があるものとして抽出した。 解析した22事例のうち、複数点で検知され斜面崩壊場所を震源として考えて矛盾しないものが6事例、震源決定は難しいものの複数点で検知されたものが4事例あった一方、斜面崩壊による震動が捉えられている可能性がほぼ考えられないものは10事例あった。斜面崩壊位置から観測点までの距離が極端に小さい場合を除き、体積10,000立米程度の斜面崩壊から定常地震観測網によって検知されうる一方で、崩壊体積が大きくとも検知されないか検知の確実度が落ちる場合が見られることがわかった。 一方、2014年7月に長野県南木曽町で発生した土石流によって励起された地震動の解析も進め、上流部で土石流が発生した時点で地震計によって検知が可能か議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り新聞記事などを利用して広く斜面崩壊のリストアップがおこない、それに基づいた地震波形記録の収集や網羅的な解析が展開できている。今年度の事例収集期間は2015年から2017年であったが、解析のターゲットとする斜面崩壊の規模や、新聞記事にどのような情報が地震波形解析をおこなうにあたって掲載されている必要があるのかなどのノウハウが3年度の解析で得られたため、次年度以降により多くの事例収集が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた新聞記事などにおける斜面崩壊事例の収集に関するノウハウを利用して、さらに時期や文献を広げ斜面崩壊事例について探索を進める。また、検出された斜面崩壊事例に対して地震波形解析をおこなう。 斜面崩壊を記録していたと思われる地震波形記録が見つかった事例に対しては、地震波形記録の特徴を斜面崩壊現象と関連付けて理解するため、斜面崩壊の規模や地質などについて文献調査や現地調査をおこなう。
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Causes of Carryover |
本研究は、文献調査等による斜面崩壊事例の収集、地震波形解析、現地調査による斜面崩壊の詳細な理解を通じた地震波形の特徴の解釈、の主に3つのセクションから構成されている。今年度は新型コロナウィルスの感染拡大のため、緊急事態宣言やまん延防止措置が京都府等に適用されていた期間が長く、現地調査をなるべく避け、文献調査や地震波形解析などの出張を伴わずに実施できる内容を先行しておこなった。そのため、旅費や現地調査費がかからなかったため予算との差額が生じた。次年度以降については、新型コロナウィルスの感染状況を鑑みながらも、できるだけ今年度実施できなかった現地調査等を進めていく予定である。
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