2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of Local Strengthening Method for Micro Mechanical Components Using FIB Irradiation Induced Martensitic Transformation
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21K18832
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
高島 和希 熊本大学, 国際先端科学技術研究機構, 卓越教授 (60163193)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 集束イオンビーム / マルテンサイト変態 / 材料強化 / MEMS / 微小集積機械デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は304オーステナイト系ステンレス鋼の微小領域に集束イオンビーム(FIB)を照射させることにより形成されるマルテンサイトの結晶方位やそのバリアントの関連について調べた。 供試材としては、市販のSUS304鋼を用い、熱処理により結晶粒を100μm程度まで粗大化させ、表面を鏡面研磨したものを用いた。次に、EBSD(電子線後方散乱回折)を用いて、試料表面の結晶粒の面方位を調べ、代表的な結晶面である(100)、(110)、(111)の結晶粒を選択し、結晶粒内の微小領域(10μm×10μm)に対して、Gaイオンを用いた集束イオンビーム(FIB)照射を行った。照射条件としては、照射方向を照射面に対して垂直とし、照射電流を1 nAから65 nAまで変化させた。 照射領域をEBSDにより観察した結果、1 nAの照射電流では相変態はほとんど観察されなかったが、3 nA以上の照射電流でオーステナイト(γ)相からマルテンサイト(α’)相への相変態が生じた。一方、15 nA以上の照射電流では、スパッタリングのため表面に凹凸が形成された。次に、3 nA照射材について、γ相とα’の方位を調べたところ、すべての照射方位においてNishiyama (N)の関係に近い方位関係となっていた。また、マルテンサイトのバリアントを観察した結果、結晶粒方位に依存して形成されたバリアントが異なっていた。このことはFIB照射面の結晶方位を変えることで、形成されるマルテンサイト晶の方位を制御できることを示唆している。 上記に加え、次年度に予定している微小曲げ試験ができる試験機の開発を行うとともに、実際に10μmサイズの片持ち梁試験片をFIBにより作製し、曲げ試験及び疲労試験が行えることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は新型コロナの影響で、研究時間が大きく影響を受けたが、本研究で目指す微小領域の強化の基本となる照射方向と形成されるマルテンサイト及びバリアントの方位関係を明らかにするとともに、その形成機構がFIB照射に伴う応力誘起に基づくことを明らかにすることができた。また、最適な照射条件の決定を行うこともできた。この成果は、FIB照射により形成されるマルテンサイト晶の方位を制御できること、さらに形成されたマルテンサイトの方位に基づいた強度の制御も可能であることを示唆している。このように、オーステナイト系ステンレス鋼のFIBによる微小領域の強化の基本原理を明らかにできたことから、おおむね順調に進展していると判断した。 なお、当初参加を予定していた学会講演会が新型コロナのためオンラインに変更されたことから旅費の支出はなかったが、使途を物品費に変更することにより、当初の計画より多くの条件下で実験を実施することができ、精度の高い実験結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、実際に微小曲げ試験片を作製し、最大応力が発生する固定端表面の微小領域にマルテンサイトを形成させ、強化手法としての妥当性について検討する。また、微小曲げ試験片の作製もFIBを用いて行うが、この際、本研究で実施しているように、試験片表面にマルテンサイトが形成されることも想定される。その際には、ナノ硬さ測定を行うことで、強化の確認を行うことにする。 ところで、本研究の成果としては、材料の強化だけでなく、非磁性体であるγの中に、強磁性体である微小なα'を形成させることが可能となる。このことは力学的特性の向上に加え、磁性特性に関連した機能的な付与も可能なことを示唆しており、研究の進展によっては、当初に想定した目的以上の成果が期待できる。
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