2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K18870
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
安部 隆 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00333857)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | チタンマイクロマシニング / フレキシブルセンサ / 絶縁プロセス / 接合 / 特殊金属加工 / マイクロメス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、絶縁膜工程、フッ素樹脂との接合工程などの基盤的な要素技術およびマイクロメス作製などの応用研究において大きく研究が進展した。まず、研究項目1に関しては、チタン板を用いたフレキシブルセンサ技術については、10 μm厚オーダーの箔でも反りなしにアルミナ絶縁膜を成膜する技術を開発し学会で発表した。また、本技術を用いて鉗子に貼り付け可能なフィルム型のフォースセンサを作製し、リアルタイムで力を計測可能とした。次に、研究項目2に関しては、フッ素樹脂とチタン箔の接合にも成功した。チタンとフッ素樹脂の界面に犠牲層を形成しエッチング除去することで金属とフッ素樹脂の界面に3相を有するマイクロ流路を形成するプロセス技術を実証し学会発表も行った。電気化学を用いた気液分離デバイスなどへの応用を想定した技術であるが、既にタンタルなどの他の耐食性金属材料の微細加工技術が完成しているので準備ができた。最後に、開発したチタンMEMS加工技術を用いたマイクロメスの開発を実施し、微細刃のテーパ角度の調整に成功した。切断試験を行い1桁近い切断力の低下に成功した。また、同一チタンウェハ内において場所によりテーパ角度の異なる複数の微細刃を同時に作製する技術についても開発に成功した。これにより、設計どうりの微細刃が主刃の周辺に分布するマイクロメスを作製できるようになった。この新たに開発した先端微細加工技術を用いれば、切るメカニズムを、より詳細に科学していける可能性が出てきた。本萌芽研究で実現したスピンアウト技術として、新しい研究プロジェクトを進めていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究提案に関わる3つの項目において進展が見られた。まず、研究項目1に関する特殊金属ウェハを用いたセンサ・デバイス技術の開発では,ウェハの反りがほぼない絶縁膜を有するチタン基板を作製するプロセス技術の開発に成功し、フレキシブル・ウェアラブルセンサなどの開発に向けた基盤技術の一つが実現できた。実際に、鉗子に取り付け可能なフィルム型フォースセンサを作製し実証した。現在、絶縁膜を成膜した状態で立体的に加工するプロセスの開発を進めている。さらに、モリブデンなどの他の特殊金属の加工技術への技術転用も同時に進めている。次に、研究項目2に関するフッ素樹脂とチタン金属板の界面にマイクロ流路を犠牲層プロセスで作製する技術も実証できた。マイクロ電解反応を利用した電気化学デバイスの作製のために開発した要素技術であるが、まだ、犠牲層プロセスの時間短縮などの解決すべき課題がある。しかし、気相、液相および耐食性が高い電極層の3相を同一空間に有するマイクロデバイス技術が実現する基礎が得られた点は大きい。研究項目3に関しては、フッ素樹脂の熱収縮によるヒステリシス発生が課題となった。接合時に基板との間の大きな熱膨張係数差により、冷却時に繊維が一方向に引っ張られるためと考えられる。作製したデバイスはヒーターで加熱すると上記理由によるエントロピックな力で縮む現象が観察された。当初の想定と違う結果であるが興味深い現象を見出した。最後に、マイクロメスを自在な形状に作製する技術も開発したが、その作製精度の向上についてはまだ検討すべき加工条件が多く残されている。切るメカニズムを科学するという次のステップに進めるために、残り一年で加工技術の洗練化を進めていく予定である。萌芽研究は、一つの挑戦的課題でも解決できれば良いとの発想で進めていたが、上記に説明したように課題もあるが新しい発見もありおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究提案に関わる特殊金属製デバイスの作製技術において解決の見通しが得られ、発展研究として、デバイス応用を展開していく基盤ができた。本萌芽研究の最低レベルの目的は達成していると考えられる。ただし、技術の洗練という観点では、プロセスの再現性、処理時間の短縮やより簡単なプロセスの開発など研究の余地がある。まずは、3年の研究期間内でアイデアの検証と発掘を優先したため学術論文としてまとめる観点でのデータ整理が遅れていることも課題である。今後は、技術の洗練化と同時に「特殊金属の微細加工学」の学術観点での整理にも重点を入れていく予定である。また、チタンを含めて特殊金属が関わる学協会はどういう応用を開拓していくかの観点に力を入れている状況であり、加工技術だけでなく、当初予定の応用開拓にも研究の重点を置く予定である。なお、試作設備が製造から20から30年経過し老朽化し、その故障で研究が中断気味なので、今後、萌芽した技術について育成していく研究提案をしながら開発環境の維持にも力を入れていく。
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Causes of Carryover |
試薬品が受注生産のために入手のタイミングで生じる程度の金額の誤差が発生した。
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