2022 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ構造化グラフェンの波長圧縮効果による低エネルギー光計測技術の革新
Project/Area Number |
21K18874
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
池田 勝佳 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50321899)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | グラフェン / プラズモン共鳴 / 表面増強効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェンはその特異な電子状態から新たなフォトニックおよびプラズモニック材料として注目されている。特にナノフォトニクスにおける未踏領域といえる赤外~テラヘルツ帯域に相当する長波長領域での利用が期待されている。本研究では2次元電子系であるグラフェンの特異性に着目して、赤外・テラヘルツ帯域で巨大な波長圧縮効果を発現する可能性を検証すると同時に、可視光領域での光学応答の増強効果につても検討を行い、可視・赤外・テラヘルツ領域にまたがる広帯域のプラズモニック材料としてのグラフェンの可能性を総合的に検討することで、新規光計測技術としての開拓を目指してきた。 プラズモニック材料としてのグラフェンは、カーボン電極表面の分光応用を期待できる。そのためには、ナノホールを周期的かつ大面積に簡易に導入する必要があった。そこで、適切な周期構造を持つポーラスアルミナを作成し、これをエッチングマスクとする技術について条件の最適化を進めた。良好なナノ構造を持つアルミナマスクは作成できたが、これを利用したグラフェンへのナノ構造導入では、良好なプラズモン共鳴特性を得ることが難しかった。一方、可視光領域での増強効果については、これまでに報告例のある化学的増強効果とは明らかに異なる機構の新現象を見出すことに成功した。この現象は、金基板上に成膜したグラフェンが欠陥を持つ場合に観察された。また、一般的な表面増強効果を示す基板材料とは異なり、数か月の長期間にわたって安定的に信号増強効果を示した。 また、グラフェンに電位印加を行う関連実験でも興味ある現象を見出した。この成果については、本年度の業績期間中には間に合わなかったが、既に特許申請済みである。以上のように、当初の実験計画通りでない面もあったが、光学材料としてのグラフェンに関する挑戦的研究として十分な成果を上げた。
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