2021 Fiscal Year Research-status Report
新しい金属酵素研究へのテラヘルツ電子スピン共鳴法の応用
Project/Area Number |
21K18937
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
堀谷 正樹 佐賀大学, 農学部, 助教 (80532134)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 晋 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 准教授 (80283901)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | 金属タンパク質 / 電子スピン共鳴法 / 整数スピン / テラヘルツ / 強磁場 / ヘムタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子スピン共鳴法(ESR)はこれまで数多くの金属酵素研究に応用されてきた。しかし、市販の装置では測定対象が半整数スピン系の時のみに限定される。このデメリットを解消するため、強磁場・高周波数のESR装置の開発が行われているが、低感度装置であるため希薄スピン濃度系である金属酵素への応用研究はほとんどなされていない。本研究では全ての金属酵素が測定対象になる高感度テラヘルツESR装置を開発し、長年多くの研究者によって注目され続けているヘム酵素の反応多様性について、電子状態・配位構造の両面から解き明かす。 本年は感度を上げるためにESR検出システムを温度変化により行えるか検証した。この結果、検出感度の向上は認められなかったが、ベースラインの再現性・安定性が格段に向上した。金属タンパク質のESR信号は磁性体や金属錯体のものと比較して線幅が広いことが知られている。そのためブロードな信号となるため、ベースラインの安定化は信号検出において大きなメリットとなる。このシステムを利用して金属タンパク質のテラヘルツESR測定を行ったところ、半整数スピン系であるFe3+ヘムタンパク質に特有なESR信号の検出に成功した。整数スピン系であるFe2+ヘムタンパク質での測定は試料をFe2+状態に保つことが困難であることが判明したため、今後は嫌気下で試料をセットアップできる分光器の開発を行っていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
通常のESR装置では共振器を利用することで装置の感度を高めている。この共振器はESRに使用するマイクロ波の波長と同じ大きさの金属製である。そのため高周波数(テラヘルツ)ESRではミリメートル以下のサイズの共振器が必要となるが、技術的に作成が困難であることと試料量が共振器以下となり極小サイズとなるため、テラヘルツESRでは感度が下がってしまう。試料が磁性体や金属錯体などの場合は現状のテラヘルツESR装置でも問題なく信号検出が行えるが、大きな分子の中にひとつの金属イオンしか含まない希薄スピン系である金属タンパク質では信号検出が出来ない。そこで高感度化のために温度検出ESR装置を利用し、金属タンパク質のESR信号検出が可能であるかの検証を行い、温度検出法で金属タンパク質のESR信号が観測されることを明らかにすることができた。また整数スピン系金属タンパク質のESR信号観測のためには、厳密な嫌気状態を保ったまま試料をセットアップする必要があることも明らかになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
整数スピン系金属タンパク質のESR信号観測のためには、厳密な嫌気状態を保ったまま試料をセットアップする必要があることも明らかになったため、グローブボックス内で試料をセットアップする手法を開発する必要がある。すでにグローブボックスを購入したため、グローブボックス内で試料を準備し、凍結した試料を好気下が分光器にセットアップする手法を試みる。本手法が上手くいかない時は分光器をグローブボックス内に挿入できるような分光器系を開発する。これらより整数スピン系金属タンパク質のテラヘルツESR信号の検出を目指す。
|
Causes of Carryover |
本年度は共同研究先である神戸大学分子フォトサイエンス研究センターに工事期間があり、一定の期間装置の使用が出来なかった。そのために旅費などの使用額が予定より少なくなった。本年度は装置が使用できない間、試料作成の手法開発を行ったので、余剰分は次年度に旅費と試料作成用消耗品として使用する計画である。
|
Research Products
(8 results)