2021 Fiscal Year Research-status Report
有機分子基板に均一担持した金属間化合物ナノクラスター電極触媒の精密創製と活性評価
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21K18939
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中嶋 敦 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30217715)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | ナノクラスター電極触媒 / 金属間化合物 / 有機分子基板 / 担体表面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、既報の溶液還元法や原子共蒸着法での触媒作成の不均一性を解決するため、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングによる高強度ナノクラスター生成法を用いて、高い触媒活性が期待される金属間化合物の合金ナノクラスターを対象に、構成原子数と組成を精密に分離して担体表面上に担持して触媒を創成する方法を構築することを目的としている。これまでの触媒科学と異なる視点として、担体表面上での均一性を達成することに重点を置いて、担体表面に予め有機分子蒸着を施し、有機分子と蒸着ナノクラスターとの間の分子間相互作用の局所性によって、触媒の表面拡散の抑制と適切な有機分子の選択による電極触媒の活性化を実現することを進めてきた。 当該年度においては、金属間化合物の構成要素の一つとして、パラジウム(Pd)金属の触媒活性に焦点を当てて研究を進めた。パラジウムは触媒として広く利用される希少金属であり、触媒として利用する上では、希少資源の有効活用の上で最小単位として機能する数十個程度の原子集合体、ナノクラスターの利用が有効であると考えられる。また、構成原子のすべてを表面原子とすることで、電子状態や構造の特異性を誘起されることが考えられ、さらなる触媒活性の向上が期待できる。本研究では、気相においてパルスマグネトロンスパッタリング法によって合成したパラジウムナノクラスターを質量選別して精密に原子数を単一化して有機基板に蒸着し、担持状態において、酸素などの気体分子との反応性をX線光電子分光によって評価した。有機分子の種類を変えて担持基板の電荷特性を変化させることによって、パラジウムナノクラスターの反応性を、蒸着する有機分子によって制御できることがわかった。 この研究成果は、有機分子基板に均一担持させた金属ナノクラスターの触媒活性の考え方が有効であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、パルスマグネトロンスパッタリング法による高強度ナノクラスターイオン源を用いてパラジウムナノクラスターを触媒単位として生成させ、特定の原子数と組成をもつナノクラスターの非破壊選択的な基板蒸着によって、秩序性をもった不均一触媒としての電極触媒をすでに創製できた。有機基板に使いうる有機分子を精査して、イオン化エネルギーと電子親和力の大小と、対象とする金属ナノクラスターの電子授受についての指針を構築した。酸素などの気体分子との反応性をX線光電子分光によって評価しながら、有機分子の種類を変えて担持基板の電荷特性を変化させることによって、パラジウムナノクラスターの反応性が制御できることを明らかにしている。対象は、金属間化合物でないものの、有機分子基板に均一担持させた金属ナノクラスターの触媒活性の考え方が有効であることを示しており、これらの成果は、研究がおおむね順調に進展していることを示すものであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのパラジウムナノクラスターを用いた触媒活性の評価を基礎として、金属間化合物のナノクラスターによる電極触媒を用いて、酸素還元反応や二酸化炭素還元反応における電極触媒の活性を、X線光電子分光法による構造と電子物性と併せて評価し、ナノクラスター触媒の活性と構造、電子物性の相関を解明することを進める。本研究の方法論の構築は、構成金属原子数と組成が精密に制御された金属ナノクラスターを適切な担体表面に再現性良く展開できる方策を拓くもので、この方策によって高い活性の実現と優れた耐久性を実現すると期待される。本研究の展開によって、金属原子の希少性を超えて金属ナノクラスター触媒の化学に新しい概念を提示できる可能性をさらに検証する。
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Causes of Carryover |
国際会議招待講演への海外出張が、年度末から年度初めにかけての3月31日から4月5日の期間に開催される国際会議への出席によるもので、当該の出張旅費が次年度に及ぶことから、次年度使用額としたため。
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Research Products
(7 results)