2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of Functional Materials Exhibiting Mobility Based on Expansion and Contraction of Helical Polymer Chains
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21K18997
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
前田 勝浩 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (90303669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣瀬 大祐 金沢大学, 物質化学系, 助教 (60806686)
西村 達也 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (00436528)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | らせん / ポリアセチレン / 機能性高分子 / リビング重合 / 刺激応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者が独自に開発した「簡便かつ適用範囲の広い両末端の官能基化が可能なポリフェニルアセチレン誘導体(PPA)の精密合成技術 」と、「ラセン高分子の外部刺激応答性・運動性」・「固体表面で機能するスイッチングマテリアル」に関する知見を基軸として、従来のラセン高分子の合成手法では設計・合成が困難であった、固体基板上でプログラミングされた運動性を示すラセン高分子鎖からなる機能性マテリアルの創製を行うことを目的としている。具体的には、独自に開発したテレケリックPPAの新規精密合成法を利用して、固体基板上でプログラミングされた運動性を示すラセン高分子からなる2種類の運動性集合体(A)分子アクチュエーターと(B)運動性ポリマーベルトの創製を目指して、以下の2項目について検討を行った。 1. 分子アクチュエーターの創製 初年度に確立したPPAからなるポリマーブラシの合成手法を利用して、外部刺激に応答してラセンの巻き方向が反転するPPAの濃厚ポリマーブラシをシリカゲル表面上に作成し、高速液体クロマトグラフィー用のキラル固定相(CSP)として応用した。まず、石英基板上に濃厚ラセンポリマーブラシを作製し、円二色性(CD)測定によりその光学特性を調べ、外部刺激に応答して溶液中のPPAと同様のらせん反転を示すことを明確に示すことに成功した。次に、シリカゲル上に作成したブラシ型CSPが、多くのラセミ体に対して良好なキラル認識能を示し、そのキラル認識能力は、コーティング型CSPとほぼ同じであり、本手法による固定化によってキラル認識能力は低下しないことを明らかにした。さらに、可逆的かつ反復的な溶出順序の切り替えを示すスイッチングCSPとして機能することを実証した。 2. 運動性ポリマーベルトの創製 本年度は、PPA鎖の停止末端に、定量的に官能基を導入する新たな方法を開発することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にまとめたように、研究計画に掲げた2つの研究項目「1. 分子アクチュエーターの創製」と「2. 運動性ポリマーベルトの創製」に関して、概ね研究計画に掲げた研究成果が得られている。 「1. 分子アクチュエーターの創製」では、固体表面上に外部刺激応答性のポリ(フェニルアセチレン)鎖からなる濃厚ラセンポリマーブラシを合成し、このポリマーブラシが外部刺激に応答してらせんの巻き方向の可逆的な反転挙動を実際に示すことに成功した。つまり、固体表面上でも動的らせん高分子鎖が外部刺激に応答して十分な運動性を示すことが実証できたことから、期待通りの一定の研究成果が得られた。 「2. 運動性ポリマーベルトの創製」では、PPA鎖の停止末端に、定量的に官能基を導入する方法を新たに開発することに成功し、前年度に開発した手法に加えて、より効率的に末端に官能基を導入できることが可能となった。末端にクリック反応が可能な部位と側鎖にホスト-ゲスト相互作用部位等を導入したテレケリックブロックポリマーを合成する手法が確立できたことから、今年度までに予定していた成果が期待通り得られており、順調に進んでいる。 以上を総括し、全体的には概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に掲げた2つの研究項目に対して、今後の推進方策を以下に示す。 1. 分子アクチュエーターの創製:今年度までに確立した「固体基板上にラセン状ポリ(フェニルアセチレン)誘導体の濃厚ポリマーブラシを合成する手法」を利用して、外部刺激に応答してラセンのピッチが協同的に変化し、ポリマー鎖がバネのように伸び縮みするといったラセン伸縮挙動を示すことが報告されている各種PPA鎖からなる濃厚ラセンポリマーブラシを基板上に作成する。基板上のラセンポリマーブラシが、各種の外部刺激に応答して、協同的かつ指向性の高いラセン伸縮運動を起こすかどうかを詳細に調べ、未踏の比出力特性を示す分子筋肉として機能することを明らかにすることを目指す。 2. 運動性ポリマーベルトの創製:申請者らが独自に開発したフェニルアセチレン類のリビング重合法を駆使して、ポリマー末端にクリック反応が可能な反応活性部位、側鎖にホスト-ゲスト相互作用可能な分子認識部位を導入したテレケリックブロックポリマーを合成することに成功している。今後は、この合成法を適用して、クリック重合により分子内相互作用が優先される希薄溶液中では三次元集積構造を、固体表面ではポリマーベルトを形成する前駆体ポリマーを合成し、ポリマーベルトを運動性機能性材料として応用するための礎を築く。
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Causes of Carryover |
合成した高分子の分子量を測定するために、備品として高速液体クロマトグラフフィー用の示差屈折率検出器とポンプを購入する予定であったが、誘導体化をすることにより既存の装置での測定が可能になったために購入を取り止めた。代わりに、研究の遂行上、次年度にキラル化合物を各エナンチオマーに光学分割するための分取用のキラルカラムの購入が必要になったため、この購入に充てる計画である。
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Research Products
(18 results)