2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K19006
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
河合 壯 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40221197)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
Keywords | フォトクロミズム / 光反応 / ルイスペア |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、光反応をトリガ―とする触媒反応の開発が強力に進められている。しかしその大半は光電子移動によるものでラジカル反応に限定されている。化学反応触媒として幅広い利用研究が進むFrustrated LewisPair(FLP)の光機能化をめざす。FLPは極めて高い反応活性を有し、CO2固定化反応、環状エーテルやラクチドの開環重合によるポリ乳酸合成など幅広い検討が進んでいる。関連論文はすでに2000件を超えておりなお急増している。しかしその光制御は未達成であり、生分解性のフォトポリマーや接着剤など多面的な低環境負荷高分子など極めて波及効果が大きく挑戦的な課題である。本研究では、外部環境との物質移動なくFLPを形成する光誘導型FLP触媒(Photo-triggered FLP, PFLP)の開拓を目指し分子材料の探索研究を実施する。本研究で目指すPFLPは高活性のため触媒保存や反応操作に課題があるFLPの欠点を超克するにとどまらず、高圧密閉系や低温あるいは生体内など外部から触媒導入が困難な環境に高活性分子触媒をリモート導入可能となる。光反応によって炭素陽イオンからなるルイス酸と立体的にかさ高いルイス塩基を発生させ、その高い反応性を利用する新規な光誘導型触媒FLPを光により形成させる。カルボニル基やエステル部の光による活性化や、環状エステルの開環重合反応などに展開し生分解性フォトポリマー分野に革新をもたらす。基礎学術においては、6π光閉環反応系の特徴とされる熱開環反応に対する軌道対称禁制効果を利用することが本研究の特徴であり大きな立体障害を有する高活性種の光形成を目指している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、ヘキサトリエン-シクロヘキサジエン光閉環反応と後続するイオン乖離反応により高活性ルイスペアを構築する。この光閉環反応の特徴としては、1)高光反応量子収率(最大99%)で光閉環可能、2)光閉環に伴いR1,R2と結合する反応中心炭素原子の配置がsp2型からsp3型に変化、3)これに伴いR2がイオン乖離、4)形成する炭素陽イオンはπ共役系により安定化、5)かさ高いR1, R2 を利用すると閉環体は立体障害のため不安定化するが、開環体とのエンタルピー差が100kJ/mol以上となる場合でも安定な閉環体を形成可能、などの特徴がある。具体的にはR1としてかさ高いアルキル基やフェニル基, R2としてかさ高いルイス塩基性置換基を導入することで、立体障害により高活性化されたルイスペアFLPの形成を目指した。R3年度はR2としてジイソピルアミノ基-N(CH(CH3)2)2の導入に取り組んだ。様々な合成方法に取り組み、1段階前の合成を終えることが出来た。また最終化合物についてもその形成を確認した。光反応性については現時点では確認できておらず、化合物の精製などに慎重な取り組みが必要と考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度はこれまでのアミノ誘導体への取り組みを進めるとともに、イソプロポキシ基などにも取り組みを広げる。これらの化合物の合成を進めるとともに、光反応によって形成する光閉環体の構造同定を進める。低極性媒質中では閉環体は安定と考えられる。一方中程度の極性媒質中では王位にルイスペアへの解離が期待され、CO2の活性化などの触媒反応活性が期待される。またTHFなど環状エーテル構造を有する溶媒の場合には開環重合反応が進行するものと期待される。水分量の検定なども慎重に行いながら光反応性と後続する触媒活性について検討する。
|
Causes of Carryover |
高速液体クロマトグラフの故障が発生し、研究に遅れが発生した。代替設備を整備したものの一部の研究を次年度に実施するため経費執行においても次年度使用額が発生した。2022年度の早期にはこの経費を主に試薬類などとして執行しつつ研究推進を強化し、予定の研究期間内で研究課題を完了する。
|