2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K19032
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
古南 博 近畿大学, 理工学部, 教授 (00257966)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
Keywords | 光触媒 / グリセリン / 電子源 / 還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
TiO2を光触媒、グリセリンを電子源、溶媒を水とする物質変換反応系を探索した。また、他のアルコール類との比較を通じて、光触媒反応におけるグリセリンの特性を明らかにした。 試験管中の4-ニトロベンゼンスルホン酸(4-NBS)とグリセリンを溶解させた水溶液にTiO2を懸濁させ、アルゴン雰囲気下、水銀灯の光を照射した。気相中の二酸化炭素をガスクロマトグラフにて、液相を高速液体クロマトグラフにて分析した。3時間の紫外光照射の後、4-NBS中のニトロ基が還元された4-アミノベンゼンスルホン酸(4-ABS)が高い選択性で得られた。反応が完結した3時間以降は二酸化炭素の生成が停止し、また、副反応は進行しなかった。別途、太陽光照射下における実験を行ったところ、物質収支が高く維持され4-NBSの還元反応が進行した。 水中、TiO2光触媒による4-NBSの還元反応において、電子源となるアルコールの種類の影響について評価した。3時間の紫外光照射の後、4-NBSが完全に消費され、4-ABSが生成したものはグリセリンのみであった。1価のアルコールである1-プロパノールと2-プロパノールの場合、還元反応がほとんど進行しなかった。また、2価のアルコールであるプロパン-1,2-ジオールとプロパン-1,3-ジオールを用いたとき、還元反応が進行したが、グリセリンの結果と比較すると反応速度はかなり小さかった。また、隣り合う炭素原子に水酸基が一つずつ結合した1,2-グリコール型が電子源として有効に機能することがわかった。同様にエチレングリコールを使用した場合、プロパン-1,2-ジオールのときとほぼ同量の4-ABSが得られた。 以上のことから、グリセリンは水溶媒中の光触媒的還元反応において電子源として有効に機能すること、他のアルコールと比較すると電子源としてより利用しやすいことが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水中、TiO2光触媒による4-NBSの還元反応における各種反応条件の影響を広範囲に検討し、最適な条件下、4-ABSが定量的に生成すること、また、太陽光下においても4-ABSが生成することを明らかにし、当初の目標を達成した。TiO2光触媒の適性についても知見を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
還元反応系(有機系および無機系)の拡張、および、より利用が難しいバイオマスの利用を並行して進める。 1)高難度バイオマスへの挑戦と還元反応の拡張【拡張性の評価】:木質系バイオマスの最大の課題はリグニンの利用であろう。1)がある程 度進んだ時点でリグニンあるいは可溶化リグニンからの電子抽出に挑戦する。また、電子利用(還元系)の拡大を図るため、硝酸イオンの光触媒還元にも挑戦する。生成した亜硝酸イオンはアゾ化合物の原料として用いることができる。このことにより硝酸イオンの資源化と固定化が達成されることになるため精力的に取り組む。 2)アンモニアからの電子移動反応と無害化:水中アンモニアの分解反応(2/3NH3(aq) (a = 1 mol/dm3) → H2(g) + 1/3N2(g), ΔG= +18 kJ/mol)は水分解反応(ΔG= +237 kJ/mol)に比べて著しく起こりやすい反応であることがわかる。つまり、還元反応の電子源として適していることを示している。ここでは、還元反応だけではなく、アンモニア酸化挙動にも注目し、無害な窒素への変換が可能かについても検討する。
|
Causes of Carryover |
光触媒反応に使用する各種部品(消耗品)の国内調達が大きく遅れ、それに伴って新規な反応系の検討に遅れが生じた。今年度は、物流は徐々に回復しつつあるが、さらに手配の時期を早めるなどして物品調達に支障がないようにする。
|