2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K19032
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
古南 博 近畿大学, 理工学部, 教授 (00257966)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
Keywords | 光触媒 / グリセリン / バイオマス / 酸化チタン |
Outline of Annual Research Achievements |
廃棄物系バイオマス有効利用の観点から,石鹸の製造(けん化反応)時に副生されるグリセリンに着目した.けん化反応により副生するグリセリンは含水率が高く,回収または処理,いずれの場合においても膨大なエネルギーを必要とするため,水中に溶存するグリセリンを温和な条件下で有効利用する方法が求められている. グリセリンを電子・水素源とする反応系の拡張を目的とし,TiO2を用いるピリジン-N-オキシド(PyNO)の脱酸素反応および銅(Cu)修飾TiO2を用いる1-フェニル-1-プロピン(PP)の部分水素化反応を検討した. 1)PyNOの脱酸素反応:この反応は有機合成や生物・医療分野において重要である.PyNO(48 μmol)に対し,化学量論量のグリセリン(6.9 μmol)を添加して光触媒反応を行ったところ,光の照射にともないPyNOが減少し,ピリジン(Py)が生成した.16 hの光照射後,PyNOが完全に消費され,Pyが高収率で得られた.また,反応中の酸化還元収支(RB)がほぼ1を示していたことから,グリセリン酸化中間体は系内に残存することなく,最終的にCO2まで酸化されることを明らかにした. 2)アルキンの部分水素化反応:この反応では主にLindlar触媒が用いられているが,鉛などの触媒毒を使用しない触媒系の開発が望まれている.PPの光触媒的部分水素化反応における反応温度が与える効果について検討した.反応温度の上昇にともない副反応である水素(H2)の生成を抑制しつつ,目的生成物であるcis-beta-メチルスチレン(cis-MS)の生成量が増加する熱加速効果を見いだした。 以上のことから,光触媒を用いた物質変換反応におけるグリセリンの電子・水素源としての利用は,有用物質を製造するだけではなく,廃棄物の処理を兼ねることを明らかにした.
|
Research Products
(29 results)