2023 Fiscal Year Annual Research Report
核はなぜ球なのか?:細胞核形態のダイナミズムと生理機能の合目的性の探索
Project/Area Number |
21K19079
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 善晴 京都大学, 農学研究科, 教授 (70203263)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | メチルグリオキサール / 酵母 / 核分裂 / スピンドル極体 / Kar9 / Rad53 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、解糖系の過程で生じる代謝物メチルグリオキサール(MG)による出芽酵母の核形態異常と核分裂阻害に関わるメカニズムを明らかにすることを目的としている。これまでの解析から、MGで処理した細胞では液胞が母細胞内で肥大化する一方で核が芽に分配されず、母細胞のbud neck付近で核が成長軸に対して横向きに扁平な形状(ジェリービーンズ様核形態)を示すようになることを明らかにしている。このとき、酵母のCdk1であるCdc28のTyr-19のリン酸化が起こっており、細胞周期のG2/M期で停止いていることを明らかにしてきた。 核分裂に関連するマシナリーへのMGの影響を検討したところ、MGは微小管形成中心であるスピンドル極体(SPB)の複製を阻害することはなかったが、old SPBの芽への非対称な配向性が有意に低下した。Old SPBとnew SPBの非対称な配向性の制御にはKar9のold SPBへの非対称分布が関与する。そこで、MG処理によるKar9のSPBにおける分布を検討した結果、本来old SPBに局在するKar9がスピンドル上や、oldとnewの両方のSPBに局在する細胞の割合が増加した。しかし、もともと液胞が肥大化しており、MG処理によっても核分配が阻害されないFig4欠損株においても、MG処理によるKar9の非対称分布の崩壊が観察された。 MGは遺伝毒性を示し、MG感受性変異株のスクリーニングにおいてDNA修復に関連する因子の欠損株が得られたことから、MGがDNA損傷を引き起こしている可能性を検討した。その結果、MG処理によりDNA損傷のセンサーであるMec1依存的にRad53のリン酸化が観察された。このことから、MGはDNAダメージチェックポイントを活性化させることで核分配を阻害していると考えられた。
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