2021 Fiscal Year Research-status Report
媒介蚊のゲノムに眠る古代ウイルス遺伝子は蚊に深刻な病態を引き起こすのか?
Project/Area Number |
21K19119
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
鈴木 康嗣 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助教 (00896087)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀江 真行 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20725981)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 媒介蚊 / 内在性ウイルス配列 |
Outline of Annual Research Achievements |
シマカは、デングウイルスなどの多くのヒト病原性ウイルスを媒介する。これらの蚊媒介性感染症を制御するためには、媒介蚊側からの制御も重要となる。シマカに高い病原性を示すウイルスがあれば、シマカを減らす手段として活用できる。しかしながら、現在、シマカに重篤な病態を示すウイルスは皆無であり、これはシマカとウイルスの共進化の結果である可能性が考えられる。そこで本研究では、古代のウイルスには、媒介蚊に高い病原性を有するものが存在していたと仮説を立て、絶滅した蚊病原ウイルス遺伝子に着目した。 内在性ウイルス配列(EVE)は、進化的時間の中で、感染したウイルスの遺伝情報を有しており、シマカでは100万年以上前に挿入されたと推定されるウイルス配列も存在する。本研究では、古代の病原ウイルス遺伝子の探索元として、シマカのゲノム中のEVEを用いることとした。本研究の目的達成には、シマカのEVEを、余すことなく同定することが重要となる。そこで、EVEの検出方法の改良を試みた。これまでの主要な検出方法は、現存ウイルスのタンパク質のアミノ酸配列をクエリー、生物のゲノムの塩基配列をデータベースとして用いるtBLASTnによって行われている。しかし、この方法では、変異により生じたフレームシフトを考慮できず、内在化から長い時間が経過し、変異を蓄積したEVEについては十分に検出できない可能性がある。tfastxおよびtfastyプログラムは、フレームシフトを考慮した配列類似性検索ツールであり、これをEVEの探索に応用することでtBLASTnでは、見落とされていた配列の同定が可能になるかもしれない。そこで、上記3つの手法をヒトゲノムをデータを用いて検討した。その結果、tBLASTnと比べて、tfastxならびにtfastyでは、より多くのEVEが検出され、tfastx/yのEVE探索における有用性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を推進するにあたり、次世代シーケンスデータベースからの内在性ウイルス配列の探索は極めて重要な位置を占める。その探索方法の改良を試み、多くの先行研究で用いられているBLASTよりも優れた結果を得ることができたため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
tfastxおよびtfastyを用いてを用いて、Sequence Read Archive (SRA)などの公共の次世代シーケンスデータベースからシマカゲノム中の内在性ウイルス配列(EVE)を網羅的に探索する。この探索には、現在同定されているウイルスの配列に加え、既知のEVEもクエリーとして用いる。さらに同定されたEVEが実際にシマカゲノム中に存在しているかを、様々な地域由来の蚊個体から抽出したDNAを用いて、PCRによる検出を試みる。
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Causes of Carryover |
遺伝子解析に必要な試薬等の使用期限を考慮して、購入を次年度に見送ったものがあったため。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、学会や研究打ち合わせなどが、オンラインとなったため、旅費の使用が想定より少なくなった。購入を見送った物品の購入自体に変更はなく、現地における学会参加等も新型コロナウイルス感染症の影響を鑑みながら、次年度より行っていく予定である。
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