2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on responsible genes of pre-germination seed vernalization and secondary seed dormancy for elucidating life history plasticity in facultative winter annual weeds.
Project/Area Number |
21K19125
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Research Institution | Niigata Agro-Food University |
Principal Investigator |
吉岡 俊人 新潟食料農業大学, 食料産業学科, 教授 (10240243)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 雑草特性 / 生活史可塑性 / 種子春化 / 花成遺伝子 / 播性制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界の作物収量は、雑草を防除しなければ3割余り減少すると見積もられている。雑草の防除が困難である最大の理由は、雑草が除草を掻い潜って繁殖できることにある。除草を掻い潜るうえで必要となる本質的要素が発芽と開花のタイミングが柔軟であること、つまり生活史可塑性である。一越年草は越年草に比べてより大きな生活史可塑性を獲得しているために、農耕地の雑草となり得ている。本課題は、近縁な一越年草と越年草の比較研究によって、生活史可塑性を制御する新奇遺伝子の発見に挑戦するものである。 2021年度は、新奇花成遺伝子候補と考えている未発芽種子春化遺伝子PSVの特定を進め、この遺伝子が低温シグナルを受けて、FLCの働きを抑制する可能性を認めた。PSVの相同遺伝子を未発芽種子春化の形質をもたない越年草から単離し、検定植物であるシロイヌナズナに導入した。さらに、PSVのホモログと考えられるシロイヌナズナ遺伝子について、ゲノム編集によって1塩基欠失させた変異体を得た。2022年度に、これらの植物材料を用いて開花表現型を解析することで、新奇な花成制御系である未発芽種子春化の遺伝子を確定できると考えている。 未発芽種子春化遺伝子が確定されることによって、雑草特性の本質的要素である生活史可塑性の遺伝的プログラム解明が大きく前進する。また、種子春化の形質を制御する技術が開発されれば、農業分野での利用が期待される。本研究の農業分野への展開例として、開花に緑体春化が要求される秋播き園芸花きへの適用を試みたところ、種子春化機能を付与することで、秋播き花きを春播きの春花壇植物として利用できる結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究実施計画では、本研究の早期にヒメムカシヨモギ種子春化候補遺伝子EcPSVの機能を確定する予定であった。しかし、2021年度の研究から、2020年度までに得ていたEcPSV高発現体は単純に花成誘導されるのではなく、低温の情報伝達を経て花成誘導機能が発現する結果となった。そこで、当初計画を変更して、種子春化の機能欠損と考えられる相同遺伝子をヒメムカシヨモギの同属近縁種であるオオアレチノギクから取得してEcPSV高発現体と比較解析することとした。その解析に用いるオオアレチノギクEsPSVの単離とその高発現シロイヌナズナ変異体の作成を実施したことで、当初計画から遅れを生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
種子春化機能欠損と想定されるオオアレチノギクEsPSVはヒメムカシヨモギEcPSVに対して4塩基が異なる遺伝子構造であった。今後、まずEsPSV高発現体とEcPSV高発現体を比較解析することで、種子春化がこの4塩基変異によって生じるのか、あるいはPSV遺伝子の発現調節によるのかを明らかにする。つまり、開花誘導がEcPSV高発現体で認められ、EsPSV高発現体では認められなければ、PSVが種子春化遺伝子そのものであることが判明する。両高発現体ともが開花誘導されれば、PSV上流域の探索を実施する。その実施にはシロイヌナズナを用いる。そのためには、シロイヌナズナにおけるPSVホモログを決定する必要がある。そこで、PSV類似遺伝子にゲノム編集によるDNA欠失を生じさせて、その機能を解析する。
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Causes of Carryover |
2021年度において、試薬(抗生物質)の一部を未購入であったため、32,374円の残額が生じた。残額分について、2022年度に試薬購入費に充当する。
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Research Products
(1 results)