2023 Fiscal Year Annual Research Report
Application of visualization technology of underground saturated zone to elucidate the mechanism of storm runoff generation in forested catchments
Project/Area Number |
21K19152
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
勝山 正則 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (40425426)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芳賀 弘和 鳥取大学, 農学部, 准教授 (90432161)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | 熱赤外サーモグラフィ / 水温 / 森林流域 / 集水構造 / 流出形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
洪水発生機構を理解するために、降雨に伴う地中空間内の変化を従来よりも高時間分解能かつ三次元的に捉えることを目的に、熱赤外カメラを用いた手法により観測を進めた。 花崗岩流域において、渓流水と湧水の水温差を利用し、河道内の湧水点の発見と山体の集水構造の解明を目的とした調査を行った。その結果、明らかな温度差を示す湧水点が確認できた。また、渓流水との境界が不明瞭で採水は難しいものの、熱赤外カメラでは明らかな温度差を示す帯状の湧水帯が河道の側壁斜面下端から確認できた。夏期、冬期では共に同じ湧水点もある一方で冬期にのみ採水できた地点もあった。これは冬期の渓流水の流量が少ないため水深も浅くなり、湧水の温度差が明確に出たためである。湧水地点は標高 200m 以下に集中して存在した。標高が低くなるにつれ渓流水のSiO2濃度が高くなり、特に標高 200mより下流域で濃度が上昇していた。これは基岩深部を通過した高濃度の湧水の混合によるものであり、山体の上流部で深部に浸透した地下水が流域末端付近で湧出する実態が明らかになった。これらの成果は2023年3月に開催された日本森林学会に於いて報告済みである。 一方、火山堆積物からなる流域にて同様の観測を試みたところ、湧水は発見されなかった。これは、無降雨時には流域末端からの流出に寄与する地下水帯が収縮した状態にあり、降水量の増加に伴って湧水点が上昇し、地表流の発生域が拡大するという本流域の流出特性を反映している。つまり、2流域間で、深部に浸透した地下水が地表面に現れるプロセスの違い、および降雨に対する地表流発生・流量増加の閾値の違いを反映していると考えられる。 以上のように、熱赤外カメラを用いた地中空間内の変化の観測において、流域地質に起因する構造の違いが見られ、今後多様な地質で同様の観測を展開することにより、地下構造の類型化に寄与することが可能である。
|