2021 Fiscal Year Research-status Report
魚類の日周リズムは低水温で消失し、緑色光で回復する
Project/Area Number |
21K19153
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
高橋 明義 北里大学, 海洋生命科学部, 教授 (10183849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水澤 寛太 北里大学, 海洋生命科学部, 准教授 (70458743)
清水 大輔 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), グループ長 (40443361)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 時計遺伝子 / 低水温 / 適水温 / 明暗周期 / メダカ / ホシガレイ / 脳 / 尾部 |
Outline of Annual Research Achievements |
魚類の摂餌活動は低水温下でほぼ停止する。しかしカレイの仲間は本来なら摂餌をしない低水温(7℃)でも緑色光照下で摂餌する。我々はカレイにおける低水温下による摂餌の抑制と緑色光照射による摂餌の回復に「体内時計の明暗同調」が関与すると考えた。本研究は次の2つの仮説を検証する。 ①低水温において通常の光に対する魚類の体内時計の同調機能は低下する。 ②低水温においても特定の波長光は強力な時刻情報として体内時計を同調させる。 令和3年度は、低水温がメダカとホシガレイの体内時計におよぼす影響を明らかにするため、白色LED光による明暗条件下(LD12:12)において両魚種を適水温(メダカ25℃、ホシガレイ21℃)および低水温(メダカ10℃、ホシガレイ6℃)に馴致し、時計遺伝子発現の日内変動を調べた。メダカの尾部全体において、適水温ではcry1a、cry1b、cry5の発現量は明期開始直後にピークを示したが、低水温では発現量がほぼすべての時間帯で増大し、明期開始直後のピークが消失した。また、適水温ではclockbの発現量は暗期開始直後にピークを示したが低水温では発現量が全体的に増大して1日のうちに複数のピークが表れ、24時間周期のリズムが失われた。ホシガレイでは、明期開始2時間前(暗期)と2時間後(明期)における時計遺伝子の発現量を比較した。適水温では筋肉におけるper2とcry1aの発現量は暗期と明期でほぼ変化しなかったが、低水温では暗期と明期の発現量がともに増加した。一方脳においては、適水温では筋肉におけるper2の発現量は明期に増加したが、低水温では暗期の発現量が明期の発現量と同レベルにまで増加した。以上の結果は、適水温における時計遺伝子の発現動態はメダカとホシガレイで一部異なるものの明暗周期に同調した発現動態を示すこと、ならびに低水温によって時計遺伝子の発現が環境の明暗周期に同調できなくなることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メダカとホシガレイともに,時計遺伝子の発現が低水温と適水温で異なることをみとめた。これは本研究で検証する二つの仮説「①低水温において通常の光に対する魚類の体内時計の同調機能は低下する」と「②低水温においても特定の波長光は強力な時刻情報として体内時計を同調させる」のうち「①」を強く支持するものである。さらに「②」を検証するための基礎ができたことを意味する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、白色LED光の明暗条件下における時計遺伝子の発現動態の解析を継続して、体内時計のコアループを構成する時計遺伝子(per、cry、clock、bmal1)の発現動態をすべて明らかにする。さらに特定の波長光による明暗条件下においてメダカとホシガレイを適水温と低水温に馴致し、時計遺伝子の発現動態に低水温が及ぼす影響に対して、照射光の波長がどのような影響を及ぼすかを解明する。以上の研究結果を取りまとめ、成果発表を行う。
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Causes of Carryover |
本年度のホシガレイ生産は,親魚が不調だったため思うように研究に供する稚魚を生産できなかった。そのため飼育経費に余剰が生じた。次年度には実験魚を周年供給できるように稚魚を生産して,適切に飼育を継続する。
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