2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on novel therapeutic targets for nasal allergy
Project/Area Number |
21K19182
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関澤 信一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (80760420)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栃内 亮太 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (90833997)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | 三叉神経脊髄路核尾側亜核 / 鼻粘膜 / 免疫染色 |
Outline of Annual Research Achievements |
鼻粘膜の温痛覚や触覚等の一般感覚は、三叉神経節の神経細胞、正確には細胞体から末梢側に伸長された神経線維の終末で受容され、そのシグナルは活動電位となって、細胞体、更には中枢神経側に伸長された神経線維を通って二次感覚神経細胞へと伝達されていく。このように、神経伝達の中間地点に細胞体がある場合は、順行性・逆行性と言われるような軸索輸送を介した神経トレーサーを使用できない。従って、鼻粘膜からの情報を受け取る二次感覚神経細胞の位置を詳細に同定することは比較的困難であると考えられたが、少なくとも三叉神経脊髄路核尾側亜核(Sp5C)内における大まかな位置は明らかにしなければならない。 Sp5Cは延髄の両側中央付近を吻側から尾側へと広範囲に続いており、目印となる構造が特にはない。そこで、Sp5Cの背側端が迷走神経背側運動核(DMV)と同レベルであること、また、Sp5Cの背側端が同じく迷走神経の運動神経核である疑核(NA)と同レベルであることを利用し、これら神経核を目印に延髄の水平薄切を実施することにした。これら神経核が目印になるというのは、迷走神経に蛍光トレーサーであるDiIを附着させる比較的簡易な手術を行い、その後、延髄のスライス標本を作製することで、蛍光顕微鏡下では赤橙色の細胞体が観察できるからである。また、鼻粘膜からの情報が入力している細胞を同定するために、鼻粘膜をカプサイシンで強く刺激し、神経活動の間接的なマーカーであるC-fosタンパクを免疫染色することとした。 鼻粘膜からの入力を受けるSp5C神経細胞の詳細な位置が同定されれば、今後、目印が豊富な冠状薄切を実施し、アストロサイト(グリア細胞)の指標となるGFAP抗体、H3受容体の抗体、及び細胞核を染めるDAPI(又はNeuN)を用いて免疫染色を施し、問題がなければ、アルブミンを吸入曝露した鼻粘膜過敏動物を用いて実験を行っていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感覚神経の解剖学的構造上、鼻粘膜からの情報を受け取る二次感覚神経細胞の位置を同定することは、通常使用されるような神経トレーサー法では困難であった。また、三叉神経脊髄路核尾側亜核(Sp5C)は延髄の両側中央付近を吻側から尾側へと広範囲に続いていることから、通常利用される延髄の冠状薄切では、作業量が膨大になってしまう。そのため、今回、水平薄切を試みるとともに、Sp5Cの範囲に対して目印となる迷走神経の運動核を発光させる方法を採用した。この迷走神経運動核の発光には、蛍光トレーサーであるDiIを附着させる手術が必要であり、そのため、延髄標本作製までに時間を要してしまう。 しかしながら、現在までのところ、延髄の水平薄切標本の作製、迷走神経運動核における神経細胞の蛍光確認、カプサイシンの鼻粘膜刺激に成功していることから、しばらく後には、Sp5Cにおける鼻粘膜二次感覚神経細胞の同定が成功すると思われ、本データだけでも公表する価値のある結果と考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
鼻粘膜からの入力を受けるSp5C神経細胞の詳細な位置が同定されれば、今後、目印が豊富な延髄の冠状薄切を実施することができる。延髄の冠状薄切標本を用い、アストロサイト(グリア細胞)の指標となるGFAP抗体、H3受容体等の抗体、及び細胞核を染めるDAPI(又はNeuN)を用いて免疫染色を施し、感度等問題がなければ、アルブミンを吸入曝露した鼻粘膜過敏動物を用いて実験をおこなっていく。また、計画にあるように、Sp5C神経細胞からの神経活動を、パッチクランプ法を用いて実施し、鼻粘膜過敏動物におけるSp5C神経細胞の神経興奮性を検討する。感作動物における延髄背側部への薬剤慢性投与が、くしゃみ等の反射応答を減弱できるかどうかについては、免疫染色実験や電気生理学実験の結果を踏まえ、薬剤等の種類・用量を決定して予定である。
|