2021 Fiscal Year Research-status Report
蛍光分子の焼き付けと蛍光回復を利用したATP合成反応における酵素の回転の測定
Project/Area Number |
21K19210
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
久堀 徹 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (40181094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石内 俊一 東京工業大学, 理学院, 教授 (40338257)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | ATP合成酵素 / γサブユニット / ATP合成 / 回転 / リポソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ATP合成反応時のATP合成酵素の回転軸が酵素反応と共役して回転することを実証することを目指して、タンパク質分子に結合していて一定方向を向いている蛍光分子の焼き付けによる退色、タンパク質分子の回転に伴う蛍光分子の配向の変化による傾向の回復を観察するシステムの確立を目指している。このような実験系を構築後に、既に確立しているATP合成反応の阻害剤の知見を活用して、酵素の触媒反応と回転の関連付けを行い、ATP合成反応における回転の実証を行う。 本年度は、これを達成するために、単細胞緑藻クラミドモナスのATP合成酵素を完全複合体として単離生成し、人工膜小胞(リポソーム)に酵素触媒部位を外側に配向して埋め込む方法の確立、ATP合成酵素上の蛍光標識部位として適切な場所の特定を目指して研究を実施した。ATP合成酵素βサブユニットのN末端側に導入したHisタグを用いて温和な条件で触媒活性を保持したATP合成酵素完全複合体の単離精製技術を確立し、これがリポソームに正しい配向で埋め込まれ、合成活性を示すことを確認した。また、精製酵素複合体の構造解析を共同研究として推進したことで、酵素複合体に内在する複数のCysの分子外表面への露出具合をそれぞれ確定することができた。この情報を用いて、今回の蛍光観察の標的として利用可能なCys残基を特定することができた。 また、蛍光を取り扱う照射系・測定系に関しては、研究に用いることのできる蛍光分子の選定、退色と測定に適切なレーザー波長の選定などの情報収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度に単離精製した酵素分子の蛍光標識までを実現する予定であったが、コロナ禍による実研究時間の制約により、全体の進捗に遅れがみられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、次の計画に基づいて研究を進める。 1. ATP合成酵素複合体上で既に特定したCys残基に特異的に蛍光分子を標識する方法を確立する。 2. この標識酵素を保持したリポソームの調製を行う。 3. リポソーム上の酵素分子に強光を照射することによって蛍光分子の退色を行い、酵素反応による蛍光回復の観察を行う実験系を確立する。 4. 以上の実験系が確立したら、蛍光回復の速度論解析を行い、リポソームに埋め込まれた酵素分子複合体におけるプロトン駆動力依存の回転の実証を行う。
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Causes of Carryover |
当該年度は、酵素複合体の精製などの生化学的な実験を実施したが、蛍光標識およびこれを測定する実験系については理論的な検討を行ったのみで、化合物や測定機器の部品の調達が不要となったこと、コロナ禍により関連するすべての学会がオンライン開催となったため、旅費の執行がなかったこと、論文のオープンアクセスに必要な経費を計上したが論文執筆が遅れたためこの執行がなかったこと、などが次年度使用額の生じた理由である。 次年度は、基盤的な酵素複合体を用意できたことで、実際の生化学的解析と分光学的な解析を実施し、学会発表、論文発表を行うため、翌年度分請求額と合算して使用する予定である。
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