2023 Fiscal Year Research-status Report
ラン藻の翻訳システム改変と大規模な外来遺伝子導入の研究
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21K19217
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中西 洋一 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (60362290)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Keywords | シアノバクテリア / レポーター遺伝子 / レアコドン / 無細胞翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
シアノバクテリア(ラン藻)は、酸素発生型の光合成細菌で緑色植物光合成のモデル研究に用いられるほか、遺伝子改変によってバイオ燃料など有用物質の生産に用いられる。しかしタンパク質をコードする遺伝暗号の使用頻度に極端な偏り(コドンバイアス)がある。このため、ラン藻でない他の生物から外来遺伝子を導入してもあまり発現しないため、基礎研究・応用研究の妨げになっている。本研究ではこの問題を克服するため、ラン藻 Synechococcus elongatus PCC 7942(以下S.7942)に、他の生物の翻訳システムを導入してラン藻が苦手なレアコドンを利用できるようにする。また、コドンバイアス解消株から革新的な機能性ラン藻を作出するモデル研究を行う。 本年度は、コドンバイアスを評価するための新たな実験系として無細胞転写翻訳系の開発を行った。S.7942を大量培養し、細胞抽出液を調製して、試験管内でのレポーター遺伝子の発現を評価した。また並行して、S.7942の遺伝子改変を容易にするためのプラスミドベクターセットを検討した新規ベクターの開発を試みた。今後これらの新規手法の活用により、機能性ラン藻作出のスピードアップを図る。あわせて、新規ラン藻レポータ遺伝子に関する学会発表1件を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究室内でラン藻の培養や形質転換といった実験が不調の時期があり、予定よりも遺伝子組み換え実験がおくれている。このため研究期間内に一定成果を上げるための新たな手段として、無細胞翻訳系によるインスタント評価法の確立、最近他の研究グループが新規開発したS.7942で自立増殖可能なプラスミドを形質転換実験に取り入れるなどの工夫を行った。これらの新規開発のために、余分な時間を要したが、新たな手段を活用することで相対的に研究全体のスピードアップを図ることを期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を1年延長して研究を進める。無細胞翻訳系によるインスタント評価法で、レアコドンや外来のtRNAIle2翻訳システム因子導入の効果を検証する。また新たなベクター系を用いることで、従来よりも導入遺伝子の組み合わせの多様性を図ることができるので、機能性形質転換株ラン藻の作出をスピードアップする。追加した翻訳システムによる影響を評価する。また並行して、レアコドンに着目したラン藻遺伝子操作の改良を試みる。具体的にはラン藻プラスミドベクターに含まれるレアコドンを改変して形質転換能や薬剤耐性強度に影響するか検討する。
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Causes of Carryover |
7で記述した経緯で研究計画の遅れが生じ、その結果として物品使用や発表機会を予定通り執行できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度以降に適切に 使用する。
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